月が多すぎる

 毎晩、お風呂から上がって髪を乾かした後には庭に出て煙草を吸う。そんな日々の生活、ルーティンが染みついているせいか、人並み以上には夜空を見ているのかなと思う。家の周りは遮蔽物が少なめなので観測には向いている。高台だったらもっと良かった。

 もっとも、それは玄関を開けた直後のみで、視線は直ぐにスマートフォンの画面に移るのだけれども、環境の変化は見逃していないので、冬が近付くにつれオリオン座が現れるようになったな、とか、気付きは自然と生まれる。

 月もそう。体感的、肉眼での判断だが色合いや大きさが普段のそれとは全く異質に窺えることがあって、そういう場合、SNSで調べて情報を得る。

 十中八九、名前が付いていて『本日は〇〇ムーンの日』という具合に、ネットニュースの見出しに書かれている。そこで記事を開き、下にスクロールして詳細を学ぶ。日々の満ち欠けによっても呼び名が変わるのだから不思議でないが、それにしても種類が多すぎる。ただ、今、自分が目にしている月と名称を一緒に覚えるのはテストの空欄を埋めるような快感もあって心が満たされるのは確か。知的好奇心が絡むと案外、あっさりと頭に入ってくる。

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行谷いさご

たまに講座を受けながら十年ぐらいエッセイを書き続けています。くどい言い回しが表れたり、感情を挟む以上に説明文が長かったり、その辺を何度も読み返して反省を繰り返しながら一作品、また一作品……と、丁寧に、少しずつ作り上げていきたいです。

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