東日本大震災以降、行く機会がなかったので十五年ぶりくらい。先日、母の実家があった女川町の離島に家族全員で訪れた。これまで島へのアクセスは定期船のみ(震災前は祖父の船で行き来していた)で本数が限られている+天候に左右されやすい(仮に出発した時点で乗れたとしても、その後、天気が悪くなれば帰れなくなる可能性がある)ため気軽に立ち入れない状況だったのだけれども、昨年の十二月に本土と島を繋ぐ架け橋がかかり、車で横断できるようになったのだ。
公園があったはずの土地に砂利が敷かれ観光客向けの駐車場となっており、私たちはそこに停めて島を歩いた。
最初に目に飛び込んでくるのは青白いペンキで塗られた大きな桟橋。干からびたヒトデと海藻の山、漁を終えて、網をひっくり返した跡が残っていたり、さらに傍の、籠の中にはクリーム色の浮き玉が詰まっている。
子どもの頃はここで一日中、父と釣りをした覚えがある。竿先の震えに期待しつつ、時々、水底の帆立や、水面にぷかぷか浮かぶ河豚を眺めていた。空のバケツを見た島民にタコを譲ってもらったりもした。徐々に記憶が蘇ってきて、懐かしくて泣きそうになった。
案外変わっていないな、という感想を持てること。それだけ復興が進み、元の海に近づいてる証拠。がれきは撤去され、姿を消していたはずの生き物が戻り、それらを獲る漁師が船を出す。生活の痕跡があって、馴染み深い景色が広がっている。