真のジャーナリズム(後編)

500ページもの衝撃的かつ濃厚で重い内容のこの本をどう捌けばいいのか私にはハードルが高すぎたことには薄々気づいていたが、もう半分以上手をつけてしまっている。

とりあえず読みやすいように前編中編後編に分けた。

どの箇所を取り上げればいいのか、

どの箇所も取り上げたかった。

だがそうなるともうこの本を読んでもらった方が早い。

それがこの記事を書いた目的でもあるし、しょーもない小説(失礼)を読んでいる場合ではないことぐらいわかってもらえるはずだ。

-ジャーナリスト 清水潔-

この人はジャーナリストである前に一人の”人間”であると私は思った。

企画といえども時効寸前の事件をあえて取り上げその取材に真っしぐらに取り組む。

ひたすら事件現場を歩き観察しカメラを廻す。

事件から十数年経った現場に行ったとていまさらなにか痕跡など残っているのか、だが現場に出向かなければ見えてこないものが必ずあると平日も週末も朝も夜も夜中も執拗に足を運ぶ。

自身の推論を揺るぎなきものとするためプロの捜査を上回る取材をする、

確信が持てるまで。

そしてそのしぶとい取材の成果により警察の捜査の欠陥を見つけ北関東連続幼女誘拐殺人事件の真犯人と思わしき人物の特定にまで辿り着く。

ちなみに清水氏は桶川事件でも警察より先に犯人を見つけている。

熱意、執念、正義感、タフさ、忍耐。

これらは全て清水氏に相応しい言葉だ。

TVや雑誌の企画を何度も打ち、それを見た議員が国会で事件についての疑問を呈し問題を糺すよう訴えた。

当時の総理大臣菅義偉氏もこの事件について発言指示した。

にもかかわらず霞ヶ関は動かなかった。

北関東連続幼女誘拐殺人事件の真犯人は今なお野放しだ。

悔しさ極まる。

だが清水氏のこれまでの血と汗の結晶は確かな爪痕を残し、自分に課した当初のミッション通り日本を動かした。

記者であれば喉から手が出るほど欲しいスクープ、いわゆる手柄だが清水氏はそのスクープより最も小さな声に耳を傾け、利益よりも人の気持ちを大切にした。

欲がないからこそ清水氏はスクープを何度も出し抜ける。

私は本書を読んでてそう感じた。

この書籍が世に出たことでどれだけの人に周知され、影響を与え、そして関心と危機感を持ってもらえたか。

あの日あのバーに行きこの文庫本を手に取って本当によかった。

あとがきで清水氏は自身の娘さんを事故で亡くしたことを告白している。

なぜ北関東連続幼女誘拐殺人事件を取材することを選んだのか頷ける気がした。

これからこの本を読む方は特にあとがきを心して読んでもらいたい。

心揺さぶられ、自身のアイデンティティを改めて問うことになるだろう。

私は本を手に取り清水潔と書かれた名前をじっと眺めた。

調べると「潔」という漢字は

汚れがなくて清らか。

人の心情・行為に不純なものがない。

とある。

もう少し付け加えさせてもらうと

潔癖…妥協しない完璧なものを求める

潔い…一度決めたことを曲げない 恥ずべきこととみなして受け入れない

ともある。

最初この人の名前を見た時あまり見ない漢字だな、なんて読むんだろうと思った。

*「人は、生を享ける。

産声を上げたその時、周りには誰がいるだろうか。

男の子も、女の子も、愛情を込めて名前をもらうだろう。

その名にはどんな想いが込められているのか。」

「潔」

ご自身が仰るようにこの名前はジャーナリスト『清水潔』の全てを表していると思った。

この本に出会えたことで私の視野は広まった。

調べたところで難しすぎる専門用語もあったが霞ヶ関、法務省、検察庁、などの仕組みについてもにわかに理解した。

難題だったこの記事もなんとかまとめることができた。

未熟な私にとって本書から得たものは計り知れない。

熟読できたとはまだまだ言い難いが確実に私の糧となった。

清水さんに心から感謝したい。

心臓をぶち抜かれたこの人の生き様をお手本にするべく清水さんの活躍をこれからも追っていきたい。

*あとがきより抜粋

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chiho

自分の感性に従いエッセイ風になぞらえて気持ちを吐露します

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