
表紙目当てで新潮文庫版を読む。表紙はメアリという人物をよく表現していると思う。ディコンに出会う前だろうかと想像する。
改めて読んでも、真の主人公はコリン(コリン・グレイヴン)だとと思う。彼の病気のほとんどは気持ちによるもので、それさえ克服してしまえば治ったようなものだった。それを気づかせてくれたメアリ(メアリ・レノックス)はコリンにとって命の恩人だろう。 (屈折していた病弱な少年が主人公との出会いにより軟化していく様子は「家なき子」のアーサー・ミリガンに通じるものがある)
けれども「気持ち」をどうすればいいのか可視化することは本当に難しいことだと思う。メアリの態度はコリンにとって最初は強引なものだったのだと思うけど、それが逆にコリンのどん底に沈んでいた気持ちから救い出すきっかけだったんだろうなと思う。私もコリンだったらメアリのような友人が欲しいと感じた。
メアリも最初はコリンのような人間で、ディコンによって変化する。二人とも、ディコンによって自分の世界の狭さを見せつけられ、新しい世界を見出そうとする。ディコンからメアリへ、メアリからコリンへ。バトンのようだ。
花園の描写が華やかであり、特にコマドリの描写がかわいいなと感じる。どういう鳥か調べたことがあるが、まさにメアリの手に留まるような感じであった。
メアリとディコン、そしてコリンだけの「秘密の花園」なんだよな。子供だけの秘密基地ということだろうか、楽園でもあるのだろう。