
主人公が巨大な虫に変身した末に悲惨な結末を迎える話。これだけでどんな話なんだろうと興味津々だったのだが、主人公があまりに可哀想すぎて感情移入し、夢中で読んでしまった。
主人公のグレーゴルが家族から邪険にされて、最終的に死亡し家族には「よかった」と思われるのはあまりだなあ、と思うけど仕事ができなくなりデカいだけで迷惑をかけるグレーゴルに価値はもうないってことなのか。排泄事情とかもアレだったんで介護的な構図なんだろうな~とは思う。現代になってもちっとも他人ごとではない。
グレーゴルが虫になるまで遊び惚けていた妹が大出世したのは皮肉としかいいようがない。グレーゴルが仕事ができなくなればみんなが仕事するしかない。それはグレーゴルの妹に限らず、母・父もだ。今までグレーゴルに頼り切ってきた三人が自立を試みるのはグレーゴルには可哀想だがよかったと思う。
開始時点で早速グレーゴルが虫になっているため、過去にグレーゴルがどういう人間だったかという描写はあまりない。グレーゴルは開始時点で人間ではないため、実質グレーゴルは人間ではない扱いをされる。人間としての自我だけが残るということで、死に至るまでの描写はなんともつらいものがある。
カフカの実話が少しだけ入っているらしく、風刺小説としてとても出来がよかった。
