ネットの中で作られた疑似家族。その中身の人間が一人殺害された。犯人は疑似家族ではない、本当の家族だった。
「疑似家族」と「インターネット(黎明期)」が題材ということで、題材として両方好物な自分としては読むときのテンションを上げざるを得ない。宮部氏は先見の明があると思う。今でも出会い系サイトなどで似た事例がありそう。
犯人である一美は、実の父親でもあり本作の被害者である良介を憎んでいた。本来の家族をおざなりにして…という感情が大きかったのだろうと思う。彼女の感情は間違いではない。良介が殺害されなかったのであれば、良介は一美によって処刑(殺害)されたのは当然とも言える。
けれども、良介の感情は完全に一美ら本来の家族を弄ぶものではなく、「疑似家族」への愛着も大きかった。だから完全に良介が悪いとは言えない。もちろん不倫のような行動だろうから褒められたものではないが。
「疑似家族」をここまで残酷に描いた作品は珍しい。なぜならば「本来の家族」との対比になっているからだ。「本来の家族」と「疑似家族」が同時に存在するのは、倫理上かなりまずいだろうという話だ。
タイトルは「家族を演じる」から由来しているようだ。いつしか演技が本物になっていくグラデーションは一美にとっても、良介以外の「疑似家族」にとっても残酷である。
