本作が難解な話の古典海外文学であっても、ある程度理解ができるのは私たちがコロナ禍を経験したからだろうと思う。パンデミックが起き、経済活動の縮小が起き、人がどんどん死んでいくという情景は五年ほど前に私たちがニュースで観たようなものと同様である。
終盤で、パンデミックが収まった後に待っていたのは主要人物の死亡である。主要人物の一人であったタルーが遅れて感染したペストによって弱っていくのを見るのが辛かった。なぜ流行が過ぎた後に自分だけ感染したのか、とタルーは思ったのだと考える。
リユーはタルーの死などの経験により、ペストは終わらないという結論を出した。そもそもペストはとても頑丈なウィルスであり、放置しておくと生きたままなのだ(最強だ!)この通り、流行病に終わりはない。古き病である結核は未だに存在するし、コロナウィルスも五年経ってもなお依然存在したままである。
医療の進歩により、この作品で起こるような規模の流行病は滅多に起こらなくなったが(国にもよる)、油断するとこうなりますよ、という良い例を示しているように思える。
この作品のパンデミックの描写は非常にリアルである。感染者が苦しむ姿やパンデミックによる社会の変化。収束となってなお残り続けるウィルス。私の場合これを手に取ったのが5年前だったら読み終えることができなかったかもしれない。コロナ禍が風化しそうになっている方々にぜひ読んでほしい。
カミュは手帖(日記?)をつけており、タルーも手帖をつけていた。カミュの思い入れと、昔の人間のこまめさが伺える…
