新潮文庫版既読、今回は光文社版。
改めて読んでも悲惨な話だなと思う。グレーゴルが成人男性という設定だからこそなんとか読んでいられるが、これが思春期の少女とかだったら重すぎて現代じゃ苦情が殺到するような気がする。そういう意味ではグレーゴルの性別・年齢設定は妥当だなと思った。
グレーゴルが家族と意思疎通ができなくなるくだりは、まるで認知機能が極端に低下した人間(老人に限らず)である。なのでグレーゴルが虫になったことは若年性認知症みたいなもんじゃないのか?と思わなくもない。難病という例えもできるが、グレーゴルの状態を考えるとそれが一番近いと思う。
虫になって何もすることができなくなったわけで、怠けていればそりゃあ認知機能も落ちるわな…と思ったが、人間から虫への変化、つまり人間が持つ知能の欠落が原因だったりする?むしろそれが自然なんだろうか?
家族の家計を支えていたグレーゴルがそんな状態になって、尚且つ元々家族仲がそこまでよくなかったわけで、最後にザムザ一家はグレーゴルに対して「こんな虫が息子/兄さんだなんて…」みたいな扱い方をする。今まで目を逸らしていた現実を直視してしまった、というところだろうか。
それに至る経緯においても、(与える飯が腐ってるとか、怪我しても医者を呼ばないとか)ネグレスト的なことを行っていたからちょっとこの親子怖いね~って話にもなりうる。まあ気持ちは分からないでもないが…
グレーゴルは中盤にはもう会社をクビになっていたらしいが、どうも職務成績的にはあまり良くなかったらしい。人間だったころにあまり向上心がなかったんだろうか。だからこその虫化か。グレーゴルの虫化はもしかすると「パラサイト(寄生)」のメタファーか。耳が痛い。
読み直しても救いだと思えるのはザムザ一家が自活を始めることだけなので、グレーゴルには一切救いがない。そもそも最後に死ぬ。やはり救いのない話の主人公は成人男性に限る。 グレーゴルは虫になる前に実家を出るべきだったんだよ(グレーゴルの親父には失業後も、少しの間やりすごせる程度の貯金はあったんだしさ)それならそんなに悲しまずに死ねたはずなのだ…。
全体的に短い割には情報量というかショッキング描写がかなり多い。多分色々な意味で、うつ病の人が読んではいけないやつ。むしろ短い話でここまで読者に衝撃を与えるカフカは結構な天才なのでは?
