供えてる感

 お盆の風習は多くの儀式や準備を含むがここ近年は明らかに簡略化が進んでいると思う。団子は食品サンプル、提灯はLEDキャンドルで代用したりと伝統的な要素を残しつつ、設置や後片付けの手間を減らしている。新型コロナウィルスが流行り出してから人が集まらなくなったので(それでも線香だけ点けて帰られる親戚もいるはずなので油断できないが)下手に人目を気にせずに雰囲気づくりで間に合わせたいから、だろうか。コロナ以外では、都市化や核家族化によって、規模な準備が難しくなったこと。安全性と経済面に重きを置いたからなどそうなる背景を列挙したらきりがなさそう。

 伝統的な風習が薄れる心配はある。先祖の霊を導く光としての象徴性と、火の揺らぎがもたらしてくれる精神は冒頭で述べたLEDライトでは持てない。火の管理に神経をとがらせなくて済むのは大きいけれども、家族と先祖の心を繋ぎ、深める道具としては独特の魅力を生み出す提灯の明りが最適な気もするが、結局のところ本人が供えてる感が持てさえすればそれでいいのかもしれない。盆棚が一定の形が保てて、故人を偲ぶ気持ちがあれば。

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行谷いさご

たまに講座を受けながら十年ぐらいエッセイを書き続けています。くどい言い回しが表れたり、感情を挟む以上に説明文が長かったり、その辺を何度も読み返して反省を繰り返しながら一作品、また一作品……と、丁寧に、少しずつ作り上げていきたいです。

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