料理・食べ物に関する短編集。ほのぼのした話が多いと思いきや、たまに闇深い話もあったりする。わかりやすく、読みやすかった。
「バーバのかき氷」
認知症の祖母に孫がかき氷を買ってあげる話。孫が健気だなと思うのは、わざわざ遠くのかき氷屋まで買いに行くということだ。祖母の思い出の味だからそれしかないのだろうが、よくやったと思う。 認知能力が落ちた祖母に対して子供に対してみたいな言葉になる娘と孫がリアルである。
「さよなら松茸」
別れる直前のカップルが松茸を食べに旅行に行く話。別れ話が出る前に予約取ってしまったものだから…というのがリアルというかドロドロしているというか。それでも読後感がさわやかなのは、最後に男の方の気持ちが見えたからなんだろうな。浮気はしただろうけども、悪い男じゃなかったんだろうね。
「こーちゃんのおみそ汁」
母親に先立たれた娘が嫁ぐ前に父親に味噌汁を作ってあげる話。母親は死期を悟ったころからか、娘に料理を教えることになった。スパルタと言っていいほどだったが、大人になった娘からしてみればいい経験だったのかなと思う。(子供に火を扱わせるのはどうなんだ…と娘は書いていたが、それも真っ当ではある)最後に娘が作った味噌汁を飲んだ父親は満足そうだった。
「いとしのハートコロリット」
この話はとくに異色なんだが、既に亡くなった夫の幻を見た妻が夫を高級レストランに連れて行く話。オチが恐ろしすぎるのだが、本人がよければいいのかな…となんとも言えない気分に。結果的には妻も認知症だったんだろうけど、そこまでやるかと。
「ポルクの晩餐」
擬人化された豚とカップルとなった男が死ぬ前に豚と豪遊する話。この話も割と異色なんだけど、食べ物がテーマの短編集なのに相手が豚で本当にいいのか?とつっこみたくなる。ちなみに男の方は元々ゲイだったらしく、どっちみちセクシャルマイノリティのようだ。
「季節はずれのきりたんぽ」
死んだ夫が大好きだったきりたんぽを妻と娘が食べる話。ある意味「こーちゃんのおみそ汁」の逆バージョンなのだが、こっちは上手くきりたんぽが作れず、まずさの原因を漁ったら調味料として使ったものが間違っていたという話。しかもその原因は夫という落としぶり。ある意味怨念、なのかな。
