No.1(2025年10月31日)
「にんぽう、おたすけ!つるひめ、さんじょー!」きっとあの子は、そんなことを叫んでいる。幼稚園のブランコを“立ち乗り”しながら遊んでいる4歳の女の子がいる。横のブランコにはお友達。みんな楽しそうに誰が早くブランコを“こげる”か遊んでいる。あれは遠い昔のわたし。
わたしはバブルの匂いのする平成1年生まれ。幼稚園のころは『忍者戦隊カクレンジャー』が放送され、間違いなく子どもたちの人気を集めていた。スーパー戦隊シリーズでは第18作目にあたる。
いまでこそ“ニチアサ”と定義されるスーパー戦隊シリーズだが、調べてみると当時はいまと違い金曜日の夕方に放送されていた(らしい)。金曜日の夕方ということは、わたしは母が夕飯を用意している間、狭い借家の茶の間でじっとテレビを観ていたのか。
……いや、そんな詳しい記憶はないけれど子どものころの記憶は強烈で、女の子からは白色の鶴姫、男の子からは黒色のジライヤが人気だったと断言できる。活発で可愛らしい女の子がリーダーというのは、子どもの目から見ても当時は画期的で、いまでは肉体派タレントでYouTuberとしても有名なケイン・コスギさんの出世作でもあった。それぞれのエピソードを忘れていても、動いている画も頭の中にしっかり残っている。わたしはいまも『シークレットカクレンジャー』を聴いたり歌ったりすると元気になれる36歳児なのだ(あ、いっちゃった)。
その後の作品も歌も少しずつ覚えている。『カクレンジャー』が終了したことで“ロス”に入り観れなかった第19作目『超力戦隊オーレンジャー』。お友達が『オーレンジャー』に切り替わってもわたしは『カクレンジャー』ごっこをしたかった。小学生になり、妹とは違うと信じスーパー戦隊と決裂したと思われた第20作目『激走戦隊カーレンジャー』。しかし“ニチアサ”に移動したことで一緒にハマってしまった第21作目『電磁戦隊メガレンジャー』は高校生ヒーロー。爽やかで憧れた。シリアスな脚本だった第24作目『未来戦隊タイムレンジャー』にハマるころには、わたしは中学生になろうとしていた。最後に観たのは第26作目『忍風戦隊ハリケンジャー』だろうか。思い返せばトレンディドラマ風といわれて大人から人気だった第15作目『鳥人戦隊ジェットマン』は、親の借りてくるレンタルビデオで履修済みだった。
わたしはスーパー戦隊とどれくらい関わってきただろう。近年の第47作目『王様戦隊キングオージャー』は仮面ライダーの影響で禁じ手と思われていた虫がモチーフの作品で、息子が生まれた年だった。最近のオープニング曲は平成の曲とは違うなと年寄っぽいことも感じた。難解な設定にスマホで考察を探しながら、赤子をあやしながらテレビの前にいたのはわたしだ。同じように特撮が好きな夫と一緒に、最後はハッピーエンドでよかったと思える作品だった。
いま放映されているのは第50作目『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』。今年息子も2歳になった。いまはテレビをあまり見せていないが、きっとこれから特撮を好きになるだろう。そして4、5歳になればわたしと同じようにお友達とごっこ遊びをするだろう。女の子のごっこ遊びよりも男の子の方が激しいかも知れない。確かわたしが子どものころも男の子は常に強そうな木の棒を欲しがった。お友達とトラブルにならなければいいが。
……そう、そんなことを考えてきた。そうして続くものだと思っていたのだ。だが、第51作の次回作は決まっていない。一部でスーパー戦隊が今作で打ち止めになるという報道があったばかりなのだ。わたしはいま現在、それなりにショックを受けている。いままで続けてくれてありがとう!と思えばいいのか。仮面ライダーは続くからよかった!と思えばいいのか。いつかは終わるだろうと思いつつ、正式なアナウンスがあるまでじっと待っていよう。その間も2025年11月から宮城県で開催されるスーパー戦隊展にも行こうと思う。なにせ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』の生みの親である石ノ森章太郎さんの故郷はこの宮城県なのだ。可能なら初日に行こうとも思うし、物販にも投資しようと思う。大人なので、子供のころよりお小遣いはあるのだ。
「あの頃あれ流行りましたよね」と同世代と話せることが、どれだけ豊かで心温まることか大人になるとよくわかる。エモい。その一言だ。子供のころ、友達と遊んだ思い出はずっと続く。その時に一緒に遊ばなかった友達とも話題になる。わたしたちファンが出来ることは多くないだろうが、これからも応援を続けたい。息子が豊かな思い出をたくさん重ね、一緒にその頃の思い出を話せる友達に囲まれるよう祈るとともに、微々たるものだが大人ができる応援を続けたい。このエッセイを通してなにか思い出すタイトルはあっただろうか?あなたは仮面ライダー派だっただろうか?それとももうプリキュア世代だろうか?広告ではないが、この機会にあなたの好きなことを思い出してもらえたら嬉しい。いつでも子供のころに戻れる思い出は、最高なのだ。
