自分は「透明人間」という概念に関しては、実在なきものと捉えているゆえに真面目に考えることがなかったが、どこまで透明になるかという制約などがよく練られていて後半は楽しく読むことができた。
この話のポイントとして、声を出せる・物に触れることはできるから、正確には実体なきものではないということだ。やる気になれば他者に気づかれることはできるが、かなり制約が大きい上に上記の可視化できる部分により、かえって悪い方向に作用したのだ。
後半において透明人間になったことで暴走したグリフィンが、人間としてのアイデンティティを失っていくところが非常によかった。
また、透明人間はしばしば例え話として自分なら悪用するであろうという話になるが、本作はその究極形であるように思える。
主人公のグリフィンがせっかく透明になったというのに、服を買って胃袋の中身を隠したり、人と話す際にガワを用意しなければならないという本末転倒の状況になっていることが滑稽だ。当然透明になっても生理的欲求は止まらないわけだがら、消化器の中身すら見えてはいけない。そして彼は(人と会わなければいけないこともあり)やむを得ず服(顔を隠すマスクなども)を着ることとなる。
この話では透明になる箇所は本人の皮膚や臓器に限定していると思われ、食べ物などは除外されている。ちゃんとそのあたりの設定が練られており、SF要素が含まれる話だが、ちゃんとこうであろうリアリティがあり読みやすかった。
おそらく透明人間になったときの制約は物を買ったり、社会的活動ができなくなるということだが、それはグリフィンが孤独であることではないかと考えてしまう。
グリフィン自身は透明になる薬の発明者であったが、詰めが甘いな!と感じた。それだけの薬品が作れるならば、もう少し上記にあるような制約に気を遣わなければ自分の首を絞めるぞと。ただフィクションにおける研究者って完璧な発明ができないことがかなり多いし、彼自身もそういうものなんだろう、とは思った。(大体科学者が主人公の場合は発明で身を滅ぼすのだ。フランケンシュタインとか。)
