母と一緒に「夢メッセみやぎ」に行った。そこでミネラルマルシェが開かれていた。ミネラルマルシェでは石が売られている。ミネラルマルシェの会場には、手作りの品物を売るブースや占いを受けられるブースもあった。
ドラゴンのぬいぐるみたちを見つけたのは、手作りの品物を売るブースの一角であった。
私は一目で惹きつけられたのだが、お迎えを申し出るには至らなかった。
なぜなら、ドラゴンたちの値段は私にとっては、べらぼうに高かったからだ。
しかし、翼や手足が動くように精巧に作られている様を見ると、「そりゃ高いよなあ」と妙に納得してしまう。見た目も生きているみたいで、本当に愛らしいドラゴン。
特に紫色のドラゴンに心が惹かれたけれど、やっぱり懐が寒いからお迎えには至らない。
もしも私が本気でこの美しいドラゴンをお迎えしたいのなら、お金を貯めて念入りに準備をしなければならないだろう。そういう心意気のある人でなければ、あのドラゴンをお迎えする資格はない気がする。
いつか、またあのドラゴンたちに会える日が来るのなら、今度は恭しくお迎えしたい…そのときはそういった熱い思いが胸に去来していた気がする。
他のブースも見たのだが、ドラゴンたちほどのインパクトや心惹かれるものは見当たらなかった。
母も、あまり彼女のお眼鏡にかなうものは見つけられなかったようだった。
私は二三度ほど、わざとらしくもドラゴンたちのブースのあたりをうろついてから、母に「もう帰ろう」と申し出た。
私たちはなんだか、ガッカリとした様子で会場を後にした。
せっかくの土曜日だったのに、なんだか損をした気分になっていたと思う。
ゴーっと強い風が吹きつける音を車の中で聞きながら、私はまだドラゴンたちのことを考えていた。
もしも、あのドラゴンをお迎えしたとしても、私の部屋は散らかっていて汚い。あのドラゴンはきっと、気位が高い。私は機嫌を損ねてしまう。多分、宝の持ち腐れになる。
気高く美しいドラゴンはへそを曲げて、羽を広げて飛び立ち、作り主の許に帰ってしまうかもしれない。そのときは、きっとドラゴンの羽ばたきで、今日みたいに強い風が吹くであろう。
ふと、そんなことを思うと、一気に「ドラゴンをお迎えしたい」という熱い気持ちがしぼんで消えていくのを感じた。
私にあのドラゴンのぬいぐるみは、ブタに真珠だということを明確に感じ取ったのである。
土曜の昼下がり。私は思わず脱力した。
終わり
