開閉ボタン

 通所もそう。どこかに出掛けるとなるとまずJR常磐線を利用するのだけれども、新型コロナウイルスが流行っていた以前は、換気として、駅に着く度に自動的に電車の扉が開いていたが、ここ最近になって乗降時に客がボタンを操作して開閉する形に戻った。行き違いの列車を駅で待つ間、ずっと開きっ放しだったドアが閉められるようになったおかげで、冬の車内は暖房の熱が身体から離れにくく、夏の夜には、光に誘われて羽虫が入ってくることがだいぶ減った。コロナ禍前ってこんな感じだったんだっけ、と、振り返りつつ、押しボタン式の電車が都心部だとあまり見かけないなあともぼんやり思う。

 この手の列車に乗るときは暗黙のマナーが乗車客の間ではびこっている。

 例えば、自分でドアを開けて出入りしたならあとで再びボタンを押して閉めるとか。これには歴とした理由があってエアコンの風が逃げないようにするためだ。強風で停まったり、冒頭で述べた行き違いの列車を待つ間に扉が開いていると外に出ているのとそんなに変わらなくなってしまう。

 あとはなるべくボタンの側に立たないこと。厳密に言えば、下手に寄っかからずに、駅に着いたらタイミングを見計らって押してもらえるのならば近くに立つ分には全然いいのだけれども。

 何にせよ、絶対守れ、などという強制力は別になくて、誰もが気持ちよく使えればそれに越したことはないんです。ボタン式電車は地方の一部だけでしか走っておらず、車や地下鉄を主に利用するあまり馴染みのない方だっているでしょうし。ただ不特定多数の乗客が同じ空間ですごす場所であるからこそ、お互いのちょっとした配慮が肝となってるのは確実。少しでも心にゆとりを持っていたら注意を払いたいところである。

  • 5
  • 2
  • 1

行谷いさご

たまに講座を受けながら十年ぐらいエッセイを書き続けています。くどい言い回しが表れたり、感情を挟む以上に説明文が長かったり、その辺を何度も読み返して反省を繰り返しながら一作品、また一作品……と、丁寧に、少しずつ作り上げていきたいです。

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内