TRPGのシステムについて解説していきます。
今回は世界で最初に作られたシステムである”ダンジョンズ&ドラゴンズ(以降D&D)”について解説します。
D&Dとは?
剣と魔法の王道ファンタジーを主軸としたシステムです。
様々な種族とクラスを組み合わせてPCを作ってダンジョンへ挑んだり、依頼を解決したり、はたまた強大な敵と戦ったりなど多くの人がファンタジーRPGと聞いて想像するような冒険をすることができるシステムとなっています。
D&DはTRPGで最初に作られたシステムであり、コンピューター・アナログ問わず全てのRPGの原点であるといわれています。
世界観
D&Dは1つの決まった世界観ではなく、いくつもの背景設定が異なる世界が存在しています。これらは似ているところはあるものの別物であり、それぞれの世界ごとに舞台や歴史、存在する種族が異なり、そのいくつもの世界を総称して”多元宇宙”と呼びます。
以下に公式が出しているいくつかの世界観のうちの2つを紹介します。
- フォーゴトン・レルム
D&Dの基本となる世界です。特に注釈がない場合データはこの世界であることを前提としています。
世界観としては惑星トリルのフェイルーン大陸を舞台としています。王道ファンタジーと聞いて一般に連想される”中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界”であり、広大な未開の地の探索やモンスターとの戦闘など様々な冒険を行うことができます。
データは基本ルールブックに載っているものは特に制限なく使用することができます。
- エベロン
公式による世界観追加のための公募が行われ、1万を超える応募の中から当選した作品の世界です。
エベロンという世界のコーヴェア大陸を舞台としており、ごく最近まで王位継承を発端とする”最終戦争”と呼ばれる戦争があったため、終結後も国家間の対立が続いています。
近代的な世界観で、魔法技術の発展により鉄道や街灯などの高い技術のものが広く普及しており、これらを利用した近代的でありながらファンタジー要素もある独特な冒険を行うことができます。
データはサプリメント「エベロン冒険者ガイド 最終戦争を越えて」のものを多く使用します。
これらの他にも”ドラゴンランス”、”グレイホーク”、”ダーク・サン”などいくつもの世界が存在し、気分に応じて遊ぶ世界を変えてみると良いかもしれません。もちろん自分で新しい世界を作成するのも良いと思います。
システムの特徴
D&Dの特徴を解説していきます。
- GMとPCの呼称
D&DではGMのことをダンジョンマスター(DM)、PCは冒険者と呼称します。
- 判定方法
D&Dは多くの判定に20面ダイスを使用します。
基本的に1D20を振り、出目に修正値を足すことで達成値を算出し、目標値(難易度)を越えることで判定が成功します。
- 有利と不利
判定の時状況によってPLが受ける効果です。
判定の際、状況によって”有利”と”不利”の効果を受けることがあります。効果は、2D20を振って有利の際は「高いほうの出目」を、不利の際は「低いほうの出目」を使用することになります。
- キャラメイクについて
D&Dでは、PCは種族・クラス・能力値・属性・背景の5つの要素で構成されています。それぞれ判定やRPに影響し、遊ぶ上でとても重要となります。
以下にそれぞれ要素ごとに解説します。
1.種族
そのままキャラクターの種族です。
D&Dにはいくつもの種族が存在します。ファンタジーではよく耳にする”エルフ”や”ドワーフ”、現実での人間を指す”ヒューマン”、ヒューマンの半分程の身長である”ハーフリング”などそれぞれ種族ごとに外見はもちろん特技や寿命、文化に大まかな性格など様々な違いがあります。
種族には細分化された亜種族と呼ばれるものが存在し、さらに細かく派生します。それぞれ外見や特技、住処、文化も異なります。
分かりやすくまとめると種族は人間や犬といった枠組みであり、亜種族は人種や犬種といった細かい分類となります。
種族と亜種族の種類は選んだ世界で増減し、それぞれのPLがやりたいことや役割を相談して決定しましょう。
2.クラス
キャラクターが就くいわゆる職業です。
魔法使いの”ウィザード”、戦士の”ファイター”、神官の”クレリック”、盗賊の”ローグ”などRPGでよく耳にするものや蛮族戦士の”バーバリアン”、吟遊詩人の”バード”など珍しいものも多く存在し、それぞれできることが違います。
クラスには全ていくつかの”サブクラス”が存在し、選択したサブクラスによって能力の傾向が変化します。例えば同じウィザードでも”力術系統”だと冷気や火、雷といった属性魔法による攻撃を得意とするのに対し、”幻術系統”であれば幻を見せて相手を攪乱したり、恐怖させて精神ダメージを与えることができます。
サブクラスは選んだもの以外の能力を全く使えなくなるわけではなく、あくまで傾向が強化されるものです。そのため専門のサブクラスよりは弱くなりますが、他サブクラスの能力を使用することもできます。
自分のやりたいことや他PLとのバランスを意識してクラスとサブクラスを決定しましょう。
3.能力値
キャラクター本人の性能を数値化したもの。
PCの基本能力で以下の6つがあります。決定方法は複数あり、ダイスを振るか、決められたポイントを割り振ることで決定しますが、それぞれメリットとデメリットがあります。ダイスを振る場合はポイントを割り振るよりも強くなる可能性がありますが、逆に弱くなる可能性もあります。ポイントを割り振る場合はブレはなくなりますが、一定より強くなることはありません。
どのように決めるかはDMに確認しましょう。決定した能力値に種族と亜種族の修正値を足すことで最終的な能力値が決まります。
筋力:運動能力や肉体的な力の大きさを示します。
敏捷力:反応速度や素早さ、身のこなしに手先の器用さを示します。
耐久力:スタミナや体力、健康さを示します。
知力:記憶力や分析力、知識の豊富さを示します。
判断力:注意力や直観、洞察力を示します。
魅力:外見的な美しさや内面的な魅力を示します。
能力値はある程度RPにも関わります。例えば、筋力が高くて知力が低いPCであれば、体格がよくあまり物事を深く考えないキャラクターになると考えられます。
4.属性
キャラクターの倫理観や行動の傾向を表したもの。
D&DではPC・NPC問わず倫理観や行動の傾向を属性で表します。例外として理性的な思考能力を持たない場合は”無属性”とされます。
属性は2つの要素からなり、前半の社会や秩序の対しての姿勢である”秩序”・”混沌”・”中立”、後半の倫理観を表している”善”・”悪”・”中立”を組み合わせた計9通りが存在します。
属性ごとにある程度行動のパターンが存在し、例えば、”秩序にして善”のキャラクターであれば積極的に他者を助けたり、犯罪者を捕まえようとするなど社会的に正しいとされる行動を取る傾向にあり、”混沌にして悪”のキャラクターであれば自分の欲望のままに他者から奪い、暴力を振るうなど自分個人の欲求を最優先した行動を取ります。
属性はあくまでそのキャラクターの典型的な行動パターンであり、絶対に常時それに従った行動を取るというわけではありません。
属性は種族やクラスによってある程度傾向が決まっており、多くの者はこれに従います。抗う者も存在しますが、その者は自らが抱えている潜在的な傾向と戦い続けることとなります。特に悪の神に仕えるために生み出された種族は常に神によって引き寄せられ続けるため、抗うのは簡単なことではありません。
RPに大きな影響を与える要素ですので、後述する背景なども考慮しながら決定しましょう。個人的に属性が悪のPCは他のPCと協力することが難しいため、慣れないうちは避けたほうが良いと思います。
5.背景
そのPCがどの様な人物で、どんな人生を歩んできたかを表します。
背景は”貴族”や”賢者”、”兵士”などそのキャラクターが何者であるかを示すものと、そこから派生する”人格的特徴”・”尊ぶもの”・”関わり深いもの”・”弱味”で構成されています。
基本的に背景はDMとある程度相談して決めます。これはPLが勝手に決めてしまうとシナリオがめちゃくちゃになり崩壊してしまう恐れがあるためです。例えば、貴族にするとなったとき爵位などの地位や政治的な影響力、その家でPCはどの様な立場にいるかなど一口に貴族といっても多くの要素があり、PLが勝手に”舞台となる国の1番の大貴族の当主”と設定すると発生する事件が全部権力で解決できてしまいますし、他PCやNPCが設定上逆らえず言いなりになるしかないような状態になってしまう可能性があります。この様な設定は基本的にDMが認めることはありませんが、トラブルにならないためにも予めDMと相談して決めましょう。
背景の人的特徴・尊ぶもの・関わり深いもの・弱味はルールブックに表が用意されており、RoCで決めてもいいですし、DMが許可すれば新しいものを作成しても良いと思います。
- インスピレーション
DMがPLへRPの報酬として渡すポイント。
D&DではDMが良いRPをしたと感じたPLに”インスピレーション”というポイントを渡すことができます。PLは特定の判定にポイントを消費して有利の効果を受けることができます。
良いRPというのはPCの属性や背景などの設定に則した印象に残るようなRPのことを言い、印象に残ったとしてもPCの設定を無視したものはあまり推奨されません。
例えば、秩序にして善のPCが背後の”罪なき民”のために敵へ挑むのは良いRPと言えますが、混沌にして悪のPCが同じ理由で敵と戦うのはおかしいです。これは、混沌にして悪は自分を最優先する属性であり、”罪なき民”という他人を助ける行為をしないためです。であればどうすればよいかというと、この敵と戦うことで自分に大きな利益がある状況であればいいわけです。すごい報酬があったり、この敵に恨みがあったり、戦わなければ自分に不都合であったりなど理由は案外すぐに用意できるため、属性や背景によってインスピレーションを狙いにくくなるということはあまりありません。
- ヒット・ポイントとヒット・ダイス
キャラクターの生命力に関わる数値。
ヒット・ポイントはそのキャラクターの頑強さを表しており、これはクラスによって決まっているヒット・ダイスと能力値の耐久力によって決定されます。
ヒット・ダイスは休憩時のヒット・ポイント回復やレベルアップ時の最大値上昇に使用されます。
- アーマー・クラス
キャラクターの防御能力。
ダメージを避ける能力を表しており、D&Dでは攻撃の際に受けた側は回避判定はせず、キャラクターのアーマー・クラス(AC)の数値を参照します。
攻撃判定の達成値がAC以上なら命中、未満であれば回避または防いだと判定されます。
- セーヴィング・スロー
脅威に対する抵抗をすること。
D&Dでは呪文や罠、毒や病気といった攻撃とは別の脅威に対して、セーヴィング・スローという抵抗判定を行うことができ、これは対応した能力値で行い、成功すれば無効化または影響が小さくなります。
各クラスには2つ以上の能力値でのセーヴィング・スローにプラスの修正があり、後述する習熟ボーナスを割り振ることでもプラス修正を受けることができます。
- 習熟ボーナス
PCがレベルアップすることで得る技能を強化するためのポイント。
D&Dではレベルごとに決まった習熟ボーナスというポイントを得ます。これを割り振ることで特定の技能とセーヴィング・スローにプラスの修正を受けることができます。
レベル1で習熟ボーナスは2ポイントあり、高レベルになるほど得られる習熟ボーナスは増加します。
これらの他にも運搬や食料と水、休憩に呪文など多くのシステム的な特徴がありますが、全て書くととてつもない長さになってしまうため割愛します。
最後に
D&Dでは基本的なルールを記載し、データを制限した”ベーシックルール”というものを無料で配布しています。公式サイトでPDFがダウンロードできますので興味がある方はぜひ読んでみてください。
さらに、公式のキャンペーンシナリオの導入部分を体験版として配布しています。これとベーシックルールがあればD&Dを無料で遊べるので、D&DだけでなくTRPGに興味ある方は試しに遊んでみることをお勧めします。
D&Dはルールブックが数種類存在します。サンプルシナリオとサンプルキャラクターと簡単なルールのみが入っている”スターターセット”、PCの自主製作ができるようになっている”デラックス・プレイ・ボックス”、全てのルールとデータが載っている”コア・ルールブック”3冊の計3種類があります。
どのくらいD&Dを遊びたいかによって、どれを選ぶかが変わります。いきなりコア・ルールブックを買うとあまりのデータ量に混乱するかもしれませんし、PCを自作したいのにスターターセットを買うとキャラメイクができません。自分の環境とやりたいことを照らし合わせて選びましょう。
あとがき
今回はシステム解説の初回ということで最初のTRPGである”ダンジョンズ&ドラゴンズ”の解説をさせていただきました。
特に戦闘面など解説できていない部分も多いですが、少しでもD&Dの魅力が伝わっていれば幸いです。
次回は日本で大きな知名度を誇る”Call of Cthulhu”通称クトゥルフ神話TRPGの解説を行いたいと思います。