TRPGシステム解説 Call of Cthulhu-クトゥルフの呼び声-編 その2

 前回CoCのシステムの特徴を解説した際に長くなってしまったために分割しました。
 今回解説する項目は分割した原因となったものですので要素ごとに結構長いです。

システムの特徴

 今回はキャラメイクとアフタープレイと神話生物について解説しています。

  • キャラメイクについて

 CoCではベーシック・ロールプレイング(BRP)という方式が採用されています。これは、他システムのようにスキルや技能を選択して習得していくものと違い、能力値に応じて得られるポイントをそれぞれの技能に割り振ることで成功率を高める方式のものです。
 CoCでPCは能力値・属性・職業・技能・年齢の5つで構成されています。他にも過去の設定などの要素はありますが、データ的にはまず影響しないためそれほど気にしなくて問題ないです。

 以下に5つの要素をそれぞれ解説します。

1.能力値

 キャラクター本人の性能を表したもの。

 以下の8つがあり、基本的にダイスを振って決定します。能力値の名称は英語表記の頭の3文字を抜き出したものです。

 STR:筋力のことで力強さを表し、力が必要な場面での判定に使用します。

 CON:体力のことで健康や頑強さを表し、毒や怪我などの生命力が必要な場面での判定に使用します。

 SIZ:体格のことで身長や体重を表し、高いほど巨体となります。

 DEX:敏捷性のことで機敏さや器用さを表し、戦闘での行動順や細かい作業の判定で使用します。

 APP:外見のことで容姿や人間的な魅力を表し、高ければ交渉などの対人関係で有利に働くこともあります。

 INT:知性のことで思考速度や直感を表し、高ければ情報から原因を推理したり解決策を閃いたりする事があります。さらに、後述する技能の成功率を決める際に使用するポイントの算出にも使用します。

 POW:精神力のことで精神的な強さを表し、正気度を算出するのに使用します。

 EDU:教育のことで知識量を表し、高いほど高度な教育を受けていることになります。さらに、後述する技能の成功率を決める際に使用するポイントの算出にも使用します。

 作ったばかりのPCは全ての能力値で上限が「90」、下限は能力値ごとに変わります。滅多にないですが能力値は増減することがあり、人間であれば上限が「100」、下限が「0」となります。100の能力は他に並ぶ者がいないほどの能力を表し、0の能力はその能力が必要なことに対して自分では何もできないことを表しますが、CONに限り0になると絶対に死亡します。例外的にSIZは下限が「1」で赤ん坊が該当します。
  能力値は後述の属性の値を計算するのに使用しますし、職業にも影響します。例えば、EDUが低いPCは大学教授のような知識量が重要な職業には就かないでしょうし、STRが低ければ肉体労働が多い職業には就かないと考えられます。

2.属性

 能力値から算出される他の能力を表したもの。

 以下の7つがあり、能力値から算出されます。最後の幸運のみ例外でダイスを振って決定します。

 ダメージ・ボーナス:近距離で直接殴りつけるような攻撃で使用します。STRとSIZから算出され、高いほどより大きなダメージを与えられます。

 ビルド:”戦闘マヌーバー”という組み伏せるなどのダメージを与える以外での無力化で使用します。STRとSIZから算出され、高いほど有利に判定できますが、低いとそもそも挑戦することすらできません。

 耐久力:ダメージを受けると減少し、一定時間「0」以下になると死亡してしまいます。CONとSIZから算出され、高いほどより多くのダメージに耐えることができます。

 移動率:戦闘中1ラウンドで移動できる距離を表します。種族ごとに基本の値が決まっており、そこからSTRとDEXとSIZによって変動します。人間は「40m」が基本で高いほどより遠くまで移動できますが、CoCの戦闘はほとんど10mも無いような距離で行うため、あまり気にすることはありません。

 正気度(SAN値):神話生物との遭遇や死体を目撃するなどの恐怖体験をすることで減少します。初期値はPOWと同じ値で、高いほど恐怖に強く精神的に強靭であり、異常事態に冷静に対処できます。詳しくは前回の記事をご覧ください。

 マジック・ポイント(MP):後述する魔術や神秘的な物品を扱う際に使用します。POWから算出され、高いほど何回も魔術などを使用できます。

 幸運:PCの運が関わる判定や出目の操作、気絶に耐える際に使用します。属性の中では例外的にダイスを振って決定し、高いほど運がよく状況を切り抜ける可能性が増します。詳しくは前回の記事をご覧ください。

 属性は基本的に高いほど有利であり、生存に直結する要素であるため、管理はしっかり行いましょう。

3.職業

 そのままPCの職業です。

 CoCでは職業ごとに8つ職業技能というものが存在します。これは、PCが就いている職業で使用するであろう技能が選ばれており、ルールブックには複数の職業とそれぞれの職業技能が記載されています。ルールブックに無い職業に就きたい場合は、就きたい職業とそれに関する8つの職業技能をまとめてKPに見てもらい許可を取りましょう。
 基本的には就く職業に制限はありませんが、RPに矛盾や違和感が出てしまうため、PCの能力値を考慮したものにすることをお勧めします。例えば、INTとEDUが低いのに教授になると、どうやって教授になったのかという疑問が出てしまいますし、知識人的なRPをすると「でも頭悪いじゃん」といった矛盾が発生してしまいます。
 職業技能と普通の技能の違いについては技能の項目で解説します。

4.技能

 PCが習得している技術や知識です。

 技能は数多くあり、それぞれに初期値として多少の成功率が設定されています。
 そして、職業によって技能の中から8つ職業技能が選ばれ、EDUから算出される”職業技能ポイント”を割り振ることができ、他は”個人的趣味の技能”としてINTから算出される”技能ポイント”を割り振ることができます。
 例えば、医者で登山が趣味のPCであれば、職業技能ポイントで医療関係の職業技能を取り、技能ポイントで壁を登る”登攀”や順路を見つけ出す”ナビゲート”を取ることができます。趣味は一つである必要はなく、ポイントの許す限り取ることができますが、ある程度PCの設定に沿ったものにするとRPがしやすくなります。
 シナリオによっては頻繁に使用したり、重要な場面で必要になる技能を”推奨技能”として指定していることがあります。推奨技能にポイントを振るかどうかは個人の自由ですが、振っておくと遊びやすくなるかもしれません。
 技能の成功率は人間であれば最大99%までで、大体の目安として「50%で普通」、「70%でプロ」、「90%で他にいないほどの権威」となります。人間ではない種族の場合100%を超える技能を持つ存在もいます。
 技能もKPが許可した場合はオリジナル技能を作ることができます。どのような技能であるか、他技能と比較して名前が違うだけで内容が被っていないかを確認してからKPに許可をもらいましょう。ただ、オリジナル技能は本来存在しないため、KPから使用を要求されることはほとんどないので、自分から積極的に使用しないと折角作った意味が無くなってしまうので注意が必要です。

 技能の中には”クトゥルフ神話技能”というものがあり、これは魔術や神話生物などの神秘的なものに触れることで勝手に成長していきます。この技能を使い判定に成功すると神秘的なものに対して、それが何であるかやどのような力を持つかを理解することができ、非常に強力です。ですが、クトゥルフ神話技能が成長すると数値分、正気度の上限が減少していきます。これは止めようがなく、いつかは残っている現在の正気度すら削り始め、最終的に永久的発狂へと至らしめるとても危険なものです。

5.年齢

 そのままPCの年齢です。

 CoCでは15〜90歳のPCを作成でき、年齢によって一部の能力値に補正が入ります。
 傾向として、20〜39歳を基準として年齢が低いとSTRとSIZが小さく、年齢が高いほどSTRとCONとDEXとAPPが低下する代わりにEDUが上昇します。
 年齢の低いPCは上昇する能力はありませんが、代わりに幸運を決めるときに2回ダイスを振って高い方を使うことができます。
 個人的な意見ですが、年齢による補正は15〜59歳くらいまでは気になるほどではないので、深く考えずに考えた設定に合った年齢にすることをお勧めします。

  • アフタープレイについて

 CoCのアフタープレイでは正気度回復などの報酬、技能の成長、幸運の回復、シナリオのネタバラシなどを行います。

 それぞれを以下で軽く解説します。ただCoCでは単発シナリオが多く、PCを継続で使用しないことも珍しくないので、技能の成長と幸運の回復は省略することもあります。

 正気度回復などの報酬:KPがシナリオの報酬として正気度を設定された値だけ回復したり、物品などを渡します。この時の回復で正気度は初期値を超えても大丈夫です。

 技能の成長:セッション中に判定に成功した技能の中から1つだけ”成長ロール”を行うことができ、これは普段の判定とは逆で成功率を超える出目を出すとその技能を成長させることができます。

 幸運の回復:幸運に対して技能と同じように成長ロールを行うことができます。

 シナリオのネタバラシ:CoCではセッション内で謎を全て解き明かすことはかなり難しいです。そのため、残った謎やバックボーンをKPがPLに向けて解説することが推奨されます。PLもすっきりしますしKPもどこがよかった、面白かったなどの感想を貰いやすく今後に活かしやすくなります。

 アフタープレイでは今後もPCを継続して使う場合、そのPCが今後何をして過ごすかも決めるとよいです。理由としてはシナリオの間で何をしていたかで技能や能力値の成長、正気度の回復を行うことができるためです。例えば、正気度が低くなってしまったので、精神療法などを受けたり、特定の技能を成長させるために勉強や訓練を行ったり、明確にルールが決められています。

  • 神話生物

 人間の理外の怪物の総称です。

 クトゥルフ神話TRPGでは出てくる全ての怪物を”神話生物”と呼びます。これらは多くが人間から見て醜悪な外見をしており、目視しただけで精神に悪影響を与えます。中には能力やその存在感の大きさによって直接精神を削ってくるものもいます。
 ほとんどは人間に対して敵対的であり、人間と比べ強靭なため、遭遇した場合何かしらの被害を受けることが多く、遭遇は避けたほうが無難です。

 以下に筆者が個人的に代表的だと考えている2体を紹介します。

1.クトゥルフ

 神話の題名となっている旧支配者です。

 海底に沈んでいる都市「ルルイエ」に封印されているとされ、外見はタコのような頭に6つの目があり、髭のように触手を生やし、手足には大きなかぎ爪と水かきがあり、背中には蝙蝠のような翼を持ち、全身がぬらぬらとした鱗に覆われた全長数百メートルの二足歩行の姿であるとされています。
 封印されているため基本的に出会うことはありませんが、もし万が一信者などが復活させてしまった場合、その時点で周囲に精神汚染をまき散らし、目視でも精神にとても大きな影響を受けるため発狂する危険性が非常に高く、発狂を免れたとしても巨体であることから物理的な攻撃はほぼ意味がありません。対処法としては目覚めた原因を排除するか完全に目を覚ます前に再度封印することになります。当然ですがどちらも非常に難しいため、まず目覚めさせないことが重要となります。
 クトゥルフ神話の名前となっている存在ですが、神話の名前は初めて神話の枠組みが明らかとなった作品がラブクラフト氏作の「クトゥルフの呼び声」であることに由来しており、クトゥルフ自体は神話において特別な立ち位置ではありません。

2.ニャルラトホテプ

 旧支配者の1体でクトゥルフ神話のトリックスターと言われています。

 旧支配者の中で唯一旧神による封印を免れており、その姿は自由自在に変化することができ、特定のものを持ちません。人間にも化けることがあり、その際には容姿が人間離れした美しさであることが多いため、特別容姿が優れているNPCが出てくるとニャルラトホテプではないかと警戒するPLも多いです。
 他の旧支配者たちと違い自ら人間によく干渉し、対象を面白半分で破滅へ導くことが多いです。これは、何かの目的を持って行っているのではなく、趣味でやっているような状態なため、不特定多数の事件にかかわっており、クトゥルフ神話TRPGのシナリオの影にニャルラトホテプがいることは珍しくありません。
 ニャルラトホテプは遊び感覚で人を破滅させる計画を立てているためか、PC達に計画を阻止されても余程機嫌を損ねない限りは潔く負けを認め引き下がることが多く、神話生物の中でも比較的に交渉が可能な相手です。面白いと感じさせることができる条件を提示できれば要求を吞んでもらえることもあります。
 さらに、ニャルラトホテプは化身と呼ばれる自らの分身を作り出すことができ、同時に複数の場所に存在しています。化身の能力や記憶の精度は自由に操作可能で、たまに自分が化身であることを自覚していない者がおり、その化身を事件に遭遇させ、その様子を観察して楽しんでいることもあります。

最後に

 CoCでの判定はよく失敗します。ですので、KPはシナリオを進行するうえで、特定の能力値や技能での判定成功を必須にしてしまうと失敗してしまい、シナリオの途中で詰んでしまうことがあります。これを防止するためには何らかのリカバリー手段を用意したり、RPで問題ないところは判定なしで進めてしまうとよいです。ですが、あまりにも手厚くしてしまうとホラーとしての緊張感が無くなってしまうため、失敗し続けるようなら事件を解決できず破滅させてしまってもよいと思います。TRPGは自由に描写することができるので、PC達は脅威に抗うことができずに敗北してしまったというのも結末として問題ありませんし、CoCではホラーなのもあってそれほど珍しく無いのである程度割り切りましょう。

 CoCではルールブックをまとめたアプリが公式から配信されていて、データが簡略化された”クイックスタート・ルール”とサンプルシナリオ2本が無料で公開されています。興味がある方はダウンロード自体無料なので見てみてください。有料プランは3つあり、一番下のライトプランでは最新版のルールブックと初心者をサポートするスタートセットの2冊を閲覧でき、一番上のプレミアムプランではアプリ内に収録されている全てのルールブックとサプリメントが閲覧可能です。

あとがき

 今回でクトゥルフ神話TRPGの解説は終わりです。想像の二倍ぐらいの量となってしまいました。これでも省いた要素が結構あったりします。
 CoCは知名度があるため様々な方がシナリオを作成しており、有料無料問わず多くのシナリオが公開されています。公式サイトでも公開しているのでセッションでシナリオを用意するのは比較的簡単です。

 次回は影の世界で暗躍する”シノビガミ”について解説したいと思います。

画像参照元:https://product.kadokawa.co.jp/cthulhu/

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6面

ゲームをよくプレイしています。コンピューターとアナログを問わずにプレイしており、コンピューターゲームでは主にアクション・RPG・シミュレーションを好んでいます。アナログゲームではTRPGをよくプレイしており、そちらについて投稿していきたいです。

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