TRPGのシステムを解説していきます。
今回は侵略してくる怪物から世界を守る魔法使いとなる”ナイトウィザード”について解説します。
解説は最新版の”ナイトウィザード The 3rd Edition”を基準としています。
ナイトウィザードとは?
超常の力を使う”魔法使い(ウィザード)”となって異世界から人々を食らうために侵略してくる怪物と戦い、世界を秘密裏に守るシステムです。
現代ファンタジーで多く見られる、表向きには隠された超能力者が世界を守るために人知れず戦うというRPが楽しめます。
世界観
世界観がなかなか複雑なため項目毎に解説します。
- 世界の真実
現代社会の影には怪物がおり、日夜人々を襲っています。
現代社会が舞台であり、表向きには現実世界と同じように科学が発展し、様々な不思議なことが自然現象として証明され、非科学的な超常現象はお伽噺などの物語の中だけの存在となりました。ですが真実は違い、世界にはいまだに悪魔や妖精のような超常的な怪物”侵魔(エミュレイター)”が実在し、人々の脅威となっています。
- 侵魔
人々を襲う怪物の総称です。
侵魔は基本的に世界の裏側”裏界(りかい)”と呼ばれる世界に存在し、時折人々が住む世界”表界(ひょうかい)”に現れ人間を襲い、存在するための力”プラーナ”を奪います。プラーナを奪われた人は消滅することとなり、死亡や行方不明のような扱いとなりますが、ひどいときには記録や記憶からも消滅して最初から存在しなかったことになります。
侵魔の中には特別強大な力を持った存在がおり、その存在達は”魔王”と呼ばれます。
- 世界結界
表界を囲む幻想を排除する結界です。
”世界結界”は侵魔から世界を守るために守護者ゲイザーが作り出したものです。これは、表界に住む人々の非科学的なものは存在しないという「常識」によって成り立っており、表界から超常の存在を消し去りました。
ですが、過去に魔導炉と呼ばれるプラーナ実験施設で発生した事故により、最強の魔王”ルー=サイファー”の顕現を許してしまったことで世界結界に癒えることのない大きな傷ができてしまいました。それによって侵魔が侵入しやすくなり、ウィザード達はそれらと戦う事を余儀なくされます。この時、人々に侵魔の存在が知られてしまうと世界結界がさらに弱体化してしまうため、ウィザード達は秘密裏に侵魔と戦い世界を守っています。
システムの特徴
ナイトウィザードの特徴を解説していきます。
一部の解説が長くなりましたので次回に回すこととなりました。
- GMとPCの呼称
ナイトウィザードでは特別な呼称はありません。
PC達はウィザードと呼ばれる存在ですが、ウィザードはNPCにもいるためPCのみを指してウィザードとは呼びません。
- 判定方法
ナイトウィザードでは2D6の出目を参照して判定を行います。
2D6の出目に能力値などの修正値が足されて達成値になり、判定の難易度を超えていれば成功します。
- クリティカルとファンブル
判定の大成功と大失敗です。
ナイトウィザードではPC毎にクリティカルとファンブルの値(C値とF値)をセッション開始時に決定します。
2D6を2回振り最初の出目をC値、2回目の出目をF値とし、C値とF値が同じになった場合はF値を違う値になるまで振りなおします。それぞれの値が出たら次回のキャラメイクの項目で解説するCF修正値の分だけ値を調整することができ、調整し終えたら決定します。
クリティカルとファンブルには以下の効果があります。
1.クリティカル:達成値に「+10」してもう一度振りなおします。
2.ファンブル:達成値に「-10」します。
クリティカルはC値が出続ける限り無限に発生し、振りなおしたときにF値が出た場合は普通の出目として扱います。
このルールはそのPCの調子のよさを表していて、運が良ければC値が2D6の期待値である7になりとてつもない達成値を叩き出すこともあります。
ファンブルが出たとき達成値がマイナスになった場合、ダメージ以外は全てマイナスの達成値として扱われるため、回復量の判定でファンブルすると逆にダメージを与えてしまい、とどめをさしてしまう可能性があります。それを回避するため次回解説するプラーナを使用することができます。
GMは一律C値が「10」、F値が「5」です。
- セッションの進行
ナイトウィザードではシーン制が採用されています。
ナイトウィザードのセッションはオープニング・ミドル・クライマックス・エンディングの4つの”フェイズ”に分かれており、それぞれ条件を満たすことで次のフェイズに進行します。シーンには特に名称はなくGMが演出するマスターシーン以外はそれぞれのPCのシーンとして処理されます。基本的には全てのシーンにはGMが許可したキャラクターしか登場できず、どうしても登場したい場合はGMが難易度を指定する登場判定に成功する必要があります。ただ、登場判定もGMが許可しない場合は行えません。
それぞれのフェイズでは以下の状況が発生します。
1.オープニングフェイズ:シナリオの導入部分を描写するフェイズです。PC達がどのようにしてこのシナリオに関わることになったかを描写します。
2.ミドルフェイズ:シナリオを進行させるフェイズです。同じ事件を追っている他のPC達と合流し、情報収集や買い物、イベントの発生などを行います。
3.クライマックスフェイズ:事件の原因である侵魔と戦闘するフェイズです。戦闘前に状況・勝利条件・勝利以外の達成目標・ミドルフェイズのイベント進行による恩恵やペナルティなどの確認を行い、PL間で優先順位を共有しておくとスムーズに進みます。
4.エンディングフェイズ:事件解決後の後日談を描写するフェイズです。エピローグでありGMはPLの要望を聞いてそれを取り入れた描写をするとよいでしょう。
クライマックスフェイズでの勝利条件以外の達成目標は、達成したらPC達にバフやペナルティが無くなるといった何らかの効果があると望ましいです。特に何もないと戦闘中に不利になるかもしれないのにわざわざ手番を消費してやろうとはならないので意味がありません。
達成目標の例としてはヒロインの救助やギミックの破壊などで、効果はヒロインが支援してくれるようになったり、戦場の不利な効果の消滅などが挙げられます。
- 月匣
侵魔が世界結界の影響を受けないようにするために発生させる空間です。
侵魔は表界で世界結界に対抗するために能力を使用する際には”月匣(げっこう)”を展開します。月匣内では一般人は行動不能となり、データ的にはエキストラというルールに影響しない存在になります。
月匣の中には侵入者を妨害する防壁のような機能を持ったものがあり、それらは”フォートレス”と呼ばれ、条件を満たして状態でエントランスと呼ばれる場所からしか入ることができず、脱出には発動者の撃破か許可またはフォートレスを維持している核の破壊が必要です。
フォートレスにはトラップエリアなどの様々なエリアとそれを繋ぐ複数種類のゲートが存在し、それらの影響を受けながら目的を達成する必要があります。エリアとゲートの種類に関しては長くなるので解説しません。
フォートレスには”月匣の理”という特殊効果が存在する場合があり、プラーナを消費することで効果を受けなくすることができます。ただ、月匣の理にはPCに有利な効果を持つものもあるため、とりあえずで無効化するべきではないかもしれません。GMは月匣の理について事前に知らせてもいいですし、秘密にしても良いです。
ウィザード達はこの月匣を解析して自分たちでも使用可能としたうえ、身にまとうように展開することで常に能力の使用を可能とした極小の月匣である”月衣(かぐや)”を開発しました。月衣にはどんなものでも収納できるため、巨大な武器などの持ち歩くには不自然なものも携帯可能となり、ウィザードの戦闘能力は飛躍的に向上しました。
- 戦闘について
戦闘にかかわる要素を解説していきます。
解説では”命中”や”回避”などの単語が出てきますが、これは次回のキャラメイクで解説する”戦闘値”の一種になります。
1.プロセス
ラウンド内でのタイミングの区切りです。
ラウンドはセットアップ・イニシアチブ・メイン・クリンナップの4つのプロセスに分かれています。今のプロセスが終了すると次のプロセスに移行します。
ラウンドが開始するとセットアッププロセスが始まり、戦闘に参加している全員がこのタイミングで使用する特技の使用と判定を行って達成値から行動カウントを決定します。
次のイニシアチブプロセスでは行動するキャラクターの決定を行い、そのキャラクターが使用する特技があれば使用します。
次のメインプロセスでは行動権を得たキャラクターがムーブ・マイナー・メジャーの3つのアクションが行え、それぞれのタイミングで使用したい特技や行動を取ります。イニシアチブとメインのプロセスは行動カウントが高い順に戦闘の参加者全員分を行うまで繰り返します。
クリンナッププロセスでは全員で状態異常であるバッドステータスの処理や使える特技の使用、他にシナリオのギミックなどで発生する効果の処理を行います。
これらを戦闘が終了するまで続けます。
2.アクション
特定のタイミングで特定の行動ができる権利です。
アクションには移動ができる”ムーブアクション”・判定をしない範囲で準備ができる”マイナーアクション”・攻撃や回復などの判定を伴う重要な行動ができる”メジャーアクション”・相手の行動に反応して行動できる”リアクション”・他のどれでもないタイミングで行える”オートアクション”があります。オートアクションのタイミングは攻撃時や何らかの効果を受けた時など使用する特技によって変わり、条件を満たせば使用できます。
3.移動と距離
ナイトウィザードでは距離の概念とそれに伴う移動の方法があります。
距離には近い順から至近距離・近距離・遠距離・超遠距離の4つがあり、攻撃する場合は対象が攻撃の射程以内の距離にいる必要があります。
それぞれの距離の違いを以下に解説します。
・至近距離:武器を振ればすぐに届くほどの距離です。敵とこの距離にいる場合エンゲージというエリアが発生します。
・近距離:通常の移動でエンゲージに入れるほどの距離です。拳銃などの射程が長くない遠距離武器が届く位の距離になります。
・遠距離:通常の移動では接触できない距離です。単純に遠い場合や壁を挟んでいるため簡単には近づけない場合も遠距離になります。
・超遠距離:同じシーンに登場しているが行為の対象にできない距離です。電話などで通話していたり、とてつもない長射程の武器で攻撃されているなど相手に干渉できない距離になります。
移動はムーブアクションを使って行いますが、同時にマイナーアクションを消費することで1回分、メジャーアクションを消費することで3回分の移動ができます。通常は近距離の長さを移動1回分で移動できますが、エンゲージから離脱する場合は敵の妨害を受けるため、2回分の移動が必要になり、近距離にいる敵を迂回して遠距離の敵にエンゲージする場合は3回分の移動が必要になります。
4.攻撃
ナイトウィザードには物理攻撃と魔法攻撃の2つが存在します。
攻撃する際には攻撃側が物理攻撃なら”命中”、魔法攻撃なら”魔道”の値を使って命中判定を行い、その達成値を難易度として防御側が”回避”の値で回避判定を行って成功なら回避、失敗なら攻撃が命中します。
攻撃が命中したら攻撃側の”物攻”と”魔攻”の値をそれぞれ使用して攻撃力ジャッジという判定を行い、特技やアイテムの修正を加えてダメージを決定します。
ダメージが決定したら防御側の”物防”と”魔防”の値をそれぞれ使用して防御力ジャッジという判定を行い、特技やアイテムの修正を加えてダメージ減少値を決定し、ダメージから引いてHPの減少量を算出します。
ダメージを受けてHPが「0」になった場合、戦闘不能となり一切の行動ができなくなります。さらに、戦闘不能の時に何らかの攻撃を受けると死亡しキャラロストとなります。
5.回復
特技によってHPやMPを回復できます。
回復できる特技には”治癒力”という値が設定されており、これを使って判定することで対象を達成値分回復させることができます。この時、ファンブルして達成値がマイナスになった場合は逆にダメージを受け、このダメージでもHPが0になると戦闘不能となってしまいます。ですが、攻撃ではないため戦闘不能時にこのダメージが発生しても死亡はしません。
- アフタープレイ
ナイトウィザードのアフタープレイではレコードシートの記入や経験点の配布と使用、レベルアップを行います。
レコードシートとはセッション中にデータを管理しやすいようにHPなどの変数を書く欄やメモ欄などが用意されたシートであり、これにセッションの日付・PL名・GM名・シナリオ名を記入します。
経験点はレコードシートに書かれた条件を満たすとGMが規定した量を得ることができ、すべて満たして1セッション「10点」程度が目安となります。経験点を得るためには条件を満たす必要がありますが、余程のことがなければGMは全員に条件を満たしたとして配布するつもりで問題ありません。というのも、条件は普通にセッションに参加していれば満たせるものばかりですし、それなのにわざわざPL間で優劣をつけて気分を害する必要がないためです。さらに、GMはPLが得た経験点の合計を「3」で割った量の経験点を得ることができるので、PLにたくさん経験点を上げたほうが得なのもあります。
得た経験点は次回解説する一般特技の取得とアイテムやコネクションの常備化に使用します。一般特技は指定された量の経験点を消費することで取得でき、アイテムやコネクションの常備化はそれぞれセッション中に手に入れたものを指定された量の経験点を消費することでセッション中に手に入れたアイテムやコネクションを他のセッションにも持ち込むことができるようになります。コネクションとは他のキャラクターとの関係で持っていると情報収集などで有利になります。
レベルアップは基本的に1セッションが終了する毎に「1レベル」上昇しますが、GMはシナリオの難しさやセッションの頻度などを考慮して一度に「2レベル」以上上昇させても問題ありません。レベルアップでできることは次回解説します。
最後に
ナイトウィザードは公式で行われたセッションによって時間が進んでいるため、ルールブックには時系列が乗っており、過去にどのような事件が起きたのかを確認できます。これらのセッションは公式リプレイとして販売されているので興味があれば読んでみてください。
バージョンアップの際には世界規模の大きな事件が発生しており、1stの時には圧倒的力によって侵魔達を統率していた最強の魔王”ルー=サイファー”の討伐に成功し、2ndの時には第3の世界”闇界”から”冥魔”という存在が現れたことでウィザードと侵魔が協力して冥魔と戦い世界から放逐しました。今後あるのかは分かりませんが、3rdが終わるときにはどのような事件が起きるのでしょうか。

あとがき
今回はナイトウィザードの解説をさせていただきました。
キャラメイクの項目が長くなってしまったので分割しましたが、それだけだと次回が短すぎるので、何人か魔王についても解説しようと考えています。個性的で魅力的なキャラクターがたくさんいるため絞り込むのが少し大変です。
そういうわけで次回はナイトウィザードの解説の続きを行いたいと思います。
