TRPGのシステムを解説していきます。
今回は日本TRPGの金字塔であり王道ファンタジーの”ソード・ワールド”について解説します。
解説は最新版である”ソード・ワールド2.5”を基準としています。
ソード・ワールドとは?
剣と魔法の世界”ラクシア”で冒険者となって、ギルドから依頼を受けて失われた文明の遺跡や迷宮を探索したり、蛮族と呼ばれるモンスターの討伐など王道ファンタジーにふさわしい冒険をすることができるシステムです。
それだけではなく、種族ごとの価値観や国家同士の関係など政治的な要素で遊ぶこともできますし、蛮族のPCを作って人族と敵対したり、味方したり様々な遊び方ができるシステムでもあります。
世界観
長くなったため、世界創成の解説と舞台となる大陸の解説の2項目を解説します。
- 創成の伝説
この世界は三本の剣によって作られました。
舞台となる世界”ラクシア”は3本の”始まりの剣”-第一の剣”調和の剣ルミエル”・第二の剣”解放の剣イグニス”・第三の剣”叡智の剣カルディア”によって作られたとされています。この剣が誰に作られ、どこから来たのかは誰も知りませんが、触れた者に神として大きな力を与えました。
そして時がたち、第一の剣に触れた者たちと第二の剣に触れた者たちの間で戦争が勃発します。第二の剣に最初に触れた者である”ダルクレム”が欲深く、世界の全てを自分のものにしようとしたためです。この過程でダルクレムは魂が穢れることで生命が変容し、生命が持つすべての力が解放されることを発見します。これによって人族と今なお敵対し続けている”蛮族”またの名を”バルバロス”が誕生したのです。
第一の剣勢力と第二の剣勢力の戦争は苛烈を極め、あまりにも長く続いたことで双方が新たな力を求め始めます。そして、第三の剣に目を付けましたが、戦いに使われることを嫌った第三の剣は自ら砕け散り魔力の結晶となって世界に散らばってしまいました。さらに、長い戦争の中で第一の剣と第二の剣も行方不明となったことでなし崩し的に戦争は終結し、剣に触れたことで神になった者たちは傷を癒すため眠りにつくことになります。
ですが、残された神以外の”小さき人々”達は第一の剣勢力だった”人族”と第二の剣勢力だった”蛮族”に分かれて今も争いを続けており、双方とも文明が興っては壊れるということを繰り返し、今は第四の文明期に入ろうとしています。

- 舞台となる大陸
舞台となるのは”呪いと祝福の地アルフレイム大陸”です
ソード・ワールド2.5の舞台となるのはラクシアの中でもかなりの広さを誇る”アルフレイム大陸”、この大陸の大きな特徴は北部に空いた巨大な穴”奈落(アビス)”です。奈落は約3000年前に興った第二文明期の魔法文明時代末期に行われた魔神召喚の儀式が失敗したことにより生まれ、絶えず敵対的で強大な魔神が現れ続けたため、当時の人々が巨大な魔法の壁”奈落の壁(ウォールオブジアビス)”を作り封じ込めました。
ですが、奈落は大陸各地に飛び地のような小さな奈落”奈落の魔域(シャロウアビス)”を生み出し続けており、これを放置していると成長していずれは魔神が出現するようになることから早急な破壊が求められます。
その中身は法則性や合理性がなくめちゃくちゃですが、稀に財宝や特別な力を持った物品が見つかることがあり、さらに、奈落の魔域を形成している核”奈落の核(アビスコア)”破壊後の破片は魔法の品を作るための素材となることから、冒険者には積極的に探している者もいます。
システムの特徴
ソード・ワールドの特徴を解説していきます。
一部の解説は次回に回しています。
- GMとPCの呼称
ソード・ワールドでは特別な呼称はありません。
PCは基本的に冒険者ですが、当然ながらNPCにも冒険者はいるためPCのみをさして冒険者とは呼びません。
さらに、システム的には冒険者ではないPCを作ることも可能なため、必ずしもPC=冒険者ではないです。
- 判定方法
ソード・ワールドでは2D6の出目を参照して判定を行います。
2D6の出目に能力値などの修正値が足されて達成値になり、判定の難易度以上であれば成功します。
- 自動成功と自動失敗
他のシステムでいうクリティカルとファンブルです。
自動成功は「6のゾロ目」・自動失敗は「1のゾロ目」が出たときに発生し、判定の結果が特別良くなったり悪くなったりといった効果はなく、名前の通りに判定の難易度がいくつであったとしても問答無用で成功・失敗となります。
ただ、自動失敗は発生したときにその失敗から何かを学んだとして「50点」の経験値を得ることができます。経験点は次回解説する技能を習得するのに使用し、1,2回では足りませんが何度もセッションに参加していれば、いずれ自動失敗の経験点だけで技能をとることも可能です。
- 判定の種類
様々な行為判定に使う技能と能力値が指定されています。
ソード・ワールドはかなり自由な行動が可能なため、PLがどのような行為判定を求めてくるか分かりません。そこで、公式が想定される行為判定で使用する技能と能力値をあらかじめ用意しており、GMはこれらを参照して判定方法や難易度を決めるといいでしょう。用意されている行為判定の中には危険が迫っていることを察知する”危険感知判定”や力を込めて何かをする”腕力判定”といった分かりやすいものから、人から何かを盗み取る”スリ判定”や天候の変化を予測する”天候予測判定”といった珍しいものまで揃っており、ほとんどの行動に対応できます。
- フェロー
PCのデータを簡略化してPLがいなくても管理しやすくしたものです。
フェローはPCのデータを簡略化し、PLがいないPCをシナリオに同行させやすい様にするものです。フェローの行動はキャラ毎に設定した表を使って行われるため、望んだ行動をしてくれない場合もありますが、基本的にPC1人分の働きをしてくれます。
行動表は「1d6」を使い、1〜2・3〜4・5・6の4つの項目があり、項目毎に判定の出目が指定されているため毎回同じ達成値となります。PLはフェローに行動してほしいときに行動表を振りますが、状況に対応していない行動が出た場合(例:探索してほしいのに攻撃が出る)は「行動できなかった」又は「行為判定」に失敗したとして処理されます。
フェローはダメージや悪い影響のある魔法の効果を受けず、例えPCが全滅したとしてもフェローは単身で逃れて無事だったことになります。
作り方は名前や性格などの設定面とレベルや技能などの能力面といったデータを記入し、次に作成元のPCが取るであろう行動の表を作成します。
TRPGでは1PL毎に1PCを管理するのが前提でルールが作られているため、1人PLが複数のPCを管理しようとすると負担が大きく増加してしまっていました。そのため、参加者が足りないなどでシナリオの想定人数に届かないとセッションができない事がありましたが、フェローを追加することでこの問題を解決できるようになりました。さらに、フェローをSNSなどで公開することで様々な人とPCの共有ができます。
- 死者の蘇生
死亡した人物を生き返らせることができます。
死者蘇生にはほぼ完全な頭部と脊椎が必要で、蘇生料金を払うことで死後何日であろうと蘇生することができます。
ですが、死者の蘇生が行われると対象の魂が歪み”穢れ”を発生させます。穢れは死後日数が経過しているほど多く発生し、蓄積すると角が生えたり、食性が変化するなど肉体と精神に影響を受け、最終的に”レブナント”というアンデットの一種になり、見境なく生物を襲い始めます。そのため、死者蘇生と穢れを持つ者は冒険者以外の一般人からは忌避されています。
蛮族は元から穢れを多く持っており、蘇生されると確実にレブナントになってしまうため、死者蘇生は行いません。
- 生活費
生きていくうえで必要な行動や費用です。
ソード・ワールドでは生きていくうえで食事と睡眠と宿泊費が必要となります。これらは所持金をやりくりして用意する必要があり、食事と睡眠を翌日の午前6時まで取らなかった場合はHP・MP・判定の達成値にペナルティが入り、宿泊費は冒険者として活動する以上は絶対に徴収され、足りない場合はGMの判断に寄りますが、冒険者資格が剥奪される恐れがあります。
これらはセッション間の依頼を受けていない期間の分もまとめて生活費として徴収されるため、お金は常にある程度余裕を持たせた方が良いです。
当然ながら費用は質を下げた方が安く済み、環境が悪いことに対するデメリットなども特にないため馬小屋で寝泊まりすると金銭的な余裕ができます。データ的な有利を考えると馬小屋生活を続けてもよいですが、RP的に考えるとPC達は当然質の高い生活を望んでいるはずなので、ある程度稼げたら生活の質を上げていけばRPも楽しくなると思います。
自宅で生活している場合は同じ質の宿泊に比べ安く済みます。
戦闘について
ソード・ワールド2.5の戦闘には基本戦闘と上級戦闘がありますが、今回は簡単な基本戦闘ルールのみの解説を行います。
上級戦闘はメートル単位での距離や乱戦などより複雑となり、臨場感のある戦闘が楽しめますが、管理が非常に難しいので慣れるまでは基本戦闘で遊んだほうが良いと思います。
解説には技能や特技といった単語が出てきますが、これらは次回のキャラメイクで解説します。
- エリア
戦場は3つのエリアに分かれます。
エリアは自軍後方・前線・敵軍後方の3つに分かれており、後方エリアと前線エリアは通常移動で行き来できます。後方エリアから後方エリアへの移動には全力移動をする必要があり、この時に前線エリアに敵がいた場合は妨害されて移動できず、全力移動後は簡単な行動しかできなくなります。
同じエリアに敵味方が同時に存在する場合は乱戦という状態になり、乱戦の中にいる対象に遠距離攻撃をする際に特定の特技がないと誤射が発生するようになります。
近接攻撃は同じエリア内にしか届かず、遠距離攻撃は「射程1以上」で隣のエリアを攻撃でき、後方エリアから後方エリアには「射程2以上」が必要になります。

- 武器による攻撃
武器による攻撃の場合は命中力と回避力の判定を行います。
攻撃する側(能動側)が命中力の判定を行い、受ける側(受動側)が命中力の達成値を難易度として回避力の判定を行い、成功で回避、失敗で命中します。
- 魔法による攻撃
魔法による攻撃は行使と抵抗の判定を行います。さらに、魔法には射程や形状などの多くの要素があるためルールに対してある程度の理解が必要です。
魔法は必中なので命中力はなく能動側が発動できたかどうかの行使判定を行い、その達成値を難易度として受動側が抵抗判定を行い、成功でダメージ半減又は無効化、失敗で完全な効果を受けます。抵抗判定が成功した時の影響は魔法ごとに設定されており、中にはそもそも抵抗できないものもあります。行使判定が自動失敗した場合はそもそも魔法が発動しません。
この解説だけですと魔法の方が強いように感じますが、魔法には技能ごとに制約があり、魔法を使うために特定の装備品が必要だったり、鎧を着ていると行使判定にペナルティがあるなど条件を満たしていないとまともに扱うことができないのでシステムへの理解が必要です。
魔法だけでなく遠距離攻撃には射程があり、術者を起点とする「術者」、対象に触れている必要がある「接触」、射程:1(10m)のように射程距離が明記されている「射程:〇(△△)」の3種類が存在します。射程距離が明記されているものは、前の数字分離れているエリアに攻撃でき、()内の数字が正確な射程距離となっています。
さらに、魔法には”形状”という要素があり、射程が術者や接触の形状を持たない「-」、術者から発射される「射撃」、対象を起点に発動する「起点指定」、目標へ一直線に飛んで射線上にいるものを巻き込む「貫通」の4種類が存在します。貫通に関しては巻き込まれるかについてのルールがありますが長くなるので割愛します。
- ダメージの算出
物理と魔法の両方とも”威力表”というものを使ってダメージを算出します。
攻撃によるダメージが発生した場合、使われた武器や魔法の威力に該当する威力表の項目を参照してダメージを算出しますが、武器や魔法のデータには参照する項目の威力表が抜粋されているので、威力全体を毎回確認する必要はありません。
威力表は2D6を振った出目に対応した値をダメージに加算しますが、この時に使用した武器または魔法ごとにC値(クリティカル値)が設定されていて、C値以上の出目が出た場合はクリティカルとなり、もう一度威力表を振ってダメージを増やすことができますことができます。ただ、C値は「8未満」にはならず、クリティカル後に1ゾロが出た場合は振り足しが無かったこととして扱います。
最終的なダメージは威力表の結果と能力値や特技などの追加ダメージを合計し、受動側の装備などによる”防護点”と魔法や特技のダメージ軽減を適用して算出されます。魔法は装備による防護点の効果を受けません。
- 残弾
矢や弾も管理が必要です。
他のシステムでは省略されがちですが、弓やボウガン、銃を使うときには矢と弾が必要になります。これらは当然無くなると攻撃できなくなり、常備化のようなルールもないのでセッション毎に必要な量を事前に購入などで調達している必要があります。
- HPの減少による気絶と死亡
HPが「0」になったキャラクターは生死判定が発生します。
生死判定はHPが0以下になった時に現HPを修正値として行い(「HPが-5」なら達成値に「-5の修正」を加える)、成功すれば気絶、失敗すれば死亡してしまいます。さらに、気絶状態でダメージを受けた場合と10分間放置された場合はその時の現HPを修正値として再度生死判定が入り、失敗すれば死亡します。気絶から目覚める方法は気絶から1時間放置される・応急手当判定に成功してもらう・気絶回復効果のある特技やアイテムを使ってもらう・生死判定で自動成功するの4つが存在し、HPが1以上になるだけでは目覚めません。
気絶状態は非常に危険なので、他の参加者はできるだけ早く復活させてあげるようにしてください。
最後に
ソード・ワールド2.5は非常に多くのサプリメントが発売されており、追加ルールや特定の地方や国の情報、特技や魔法などの特定のデータだけをまとめたものなど、遊びやすさと遊び方の幅が充実しています。
さらに、スタートガイドという初心者向けに遊びやすくまとめられたものもあるので、初心者から熟練者まで全員が楽しめるシステムとなっています。
あとがき
今回はソード・ワールドの解説をさせていただきました。
いつものようにキャラメイクの部分を分割しましたが、ソード・ワールドは種族と技能の組み合わせによって非常に多彩なキャラクターを作ることが可能です。そのため、キャラメイクがとても楽しいので是非次回も読んでみてください。
次回はソード・ワールドの解説の続きを行いたいと思います。
