THRILL SHOCK SUSPENSE #03
2022年12月 変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介 愛及屋烏
MISSING PARTS the TANTEI STORIES
Continuation from last page. 03-2 https://no-value.jp/game/34703/
アンティークが誘う6つの難事件
第1話「鳴らないオルゴール」
真神恭介(まがみきょうすけ)は、行方不明の所長に成り代わり代理を務める、鳴海京香と共に探偵事務所を切り盛りしている。 また、京香と腐れ縁である月嶋成美の経営する、アンティークショップの雑用も手伝う事になった。
そんな矢先、アンティークショップ「セクンドゥム」に、名門木原家の養女・嘉納潤が壊れたオルゴールを持って訪れる。
帰りに何者かに襲われた盲目の少女・潤とその兄・浩司を助けた事から、木原邸に招かれる恭介。
…当主亡きあと、木原邸内外で次々に起こる殺人事件。 そして複雑で歪曲した人間関係。
恭介は事件解決のため奔走する。
〇資産家×遺産×洋館が舞台の王道のネタ。この時点で既に終幕へ向けての伏線が仕込まれている。
第2話「赤いカメオ」
ユニット結成の為のアイドルオーデション番組「TRY×FLY」で、最終審査まで残ったアイドル候補生3人のうち1人、高崎美幸が自殺した。
暫くして、アイドル事務所やテレビ局で高崎美幸の霊が目撃され、恭介は知り合った関係者からの依頼で噂の真相を調査する事となる。 ネット上で氾濫する奇妙な噂。そして新たな殺人事件が・・・。
現場に残されたカメオに謎を解く鍵があるのか。 芸能プロダクションとTV局を舞台に錯綜する人間模様に、恭介が斬り込む。
〇芸能界の黒い話・アイドルに怪談話を加えた話。「一柳和の受難」シリーズの第一作にて、このエピソードの話題が出る。
第3話「託されたペーパーナイフ」
恭介の良き相棒(?)である「謎の関西弁」白石哲平の元に紙袋に入った手紙とペーパーナイフが届く。哲平の元舎弟の亮太からの物らしい、怪しげな品。
手紙には「何も言わずに預かって欲しい」と書かれていただけだった。
行方不明になった亮太を追う、二人の前に現れる中国人の少女「涼雪」。
治安の悪い港町で、哲平とも付き合いのある亮太の友人達と知り合った恭介は、再び殺人事件と遭遇する。
それを皮切りに殺人事件は、まるで恭介たちを試すかのように次々と発生。 何故か亮太の友人達が異様な姿で次々と殺されていく。
次第に明らかになる、中国黒社会の存在。 恭介は闇の世界に大きく踏み込んでいく。
恭介とともに大活躍する哲平の出自も明らかに!?
〇狂気の見立て殺人と裏社会の胎動、そして宿敵の登場。
第4話「傷ついたテディベア」
前の事件で負傷した哲平の見舞いに病院を訪れた恭介は、通院中だった奈々子の担任教師の変死事件に居合わせる。しかし、彼には殺される理由が微塵も感じられない。
奈々子からの依頼で病院の調査を始める恭介だったが、調査を進めていくと普段の日常とは違う、病院の闇に包まれた部分に触れることになる。
事件の鍵は入院中の少女が持つテディベアに? 朧げながら姿を見せ始めた大組織に挑む恭介。
しかし、今度は病院内で医師が転落死する。 だが、その遺体は忽然と姿を消した!?
〇前話のダメージをナースと幼女が癒すかと思いきや、中々のホラー&グロ展開が待っている。
第5話「迷いの懐中時計」
久しぶりにバー「スピリット」に集まり、飲んでいた夜。
その帰り、店を出た途端またしても殺人現場に遭遇する恭介達。
恭介達はタクシー運転手の死体とその現場から逃走する不審な人影を目撃。 しかし、その姿を見た京香は何故かひどく動揺し、この事件は自分が調査すると主張する。
戸惑いながらも一旦は任せるが、やはり素人の京香では上手くいかない。 恭介が独自に調査を進めると、無関係と思われていた別の事件に行き当たる。
単なる殺人事件では無い、と感じた恭介は、ついに鳴海誠司の残した膨大な資料を読み解くことに…。
〇いよいよ過去の事件に潜んでいた組織の全体像が見えて来る。公安刑事の殺害など明確な動きがプレイヤーの目の前に示され、曇天の中で衝撃のラストが待っている。
第6話「追憶のペンダント」
新築のイベント会場で開催されるチャリティコンサートに出席する為、潤が帰国するという。
出迎えに行こうとした、恭介達の目の前で、成美の鑑定の師匠・柏木久蔵が銃で襲撃された。
かつて手がけた全ての事件を辿る推理と誠司の残した資料から、敵は強大な組織だと察していた恭介は、潤の兄・浩司、イベントで再会したアイドル・唯や過去の事件で知り合った多くの人々の協力を得て、「パーツ」と呼ばれる組織の正体を探り始める。
〇1〜5話のキャラクターがほとんど登場する総まとめ的なシナリオ。黒幕の正体を暴けるかは、探偵としての「足」をちゃんと使っているのか、このゲームの神髄が問われるようなエピソードになっている。全ての伏線が回収されるラストは実に芸術的。
後述
主人公真神の持つ「母親がしていたアンティークのペンダント」がゲーム全体の主軸の一つになっており、ペンダントの情報は各話を進めると、徐々に明らかになって真神の過去に繋がっていく。
各シナリオも良くまとまっており、二転三転するシナリオはプレイヤーを飽きさせず、最終部に行くとぐいぐいと引き込まれていく。プレイヤーがこういうことなのかと「考えを巡らせる」話運びも多い。
既に起きた事件を推理するというより、現在進行形の事件を追うゲームなので、行動にも推理するという他のゲームには無い斬新な要素がある。また情報収集という体験を経ることでアンフェア感は薄まるという事にも貢献している。
また「犯人の説得」という辺りに拘って作られている。劇中の捜査が、どれだけ上手くいっても、ラストの犯人との対決で対話をしくじると容赦なく探偵ランクはBやCに下がる辺り、このゲームの厳しい難易度と探偵ゲームとしての主題があるのだろう。
END.