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状況はミオイからキナミ(▲緑)へ変わり、暫く経った頃。
〔1〕〔2〕
見慣れない×型の人がキナミの横に並び会話を交わしている。
??「いや~!本当どうなることかと思ったよ、助けてくれてありがとう」
キナミ「いえ僕はただ言われた通りにしただけですよ、貴方の指示が無かったらどう行動すれば良いのか何もわかりませんでしたから…。」
??「まぁ確かに…あんな刺さり方してるのはこの世界に長くても見た事無いもんな見計らって叫んで良かったな。」
キナミ「でもまさか貴方に会えるなんて思っていませんでしたよ、1号さん。」
キナミにそう言われると×型は俯き言葉も微量ながら弱々しくなる
サクアキ「・・・もう俺は1号じゃないんだ。こんな姿にもなったのに声だけで気付くなんて嬉しくも悲しくもあるよ久しぶりの出会いだと言うのに惨めな見た目で本当にすまない、今の俺はIPも無い『サクアキ』という元人間だよ。」
キナミ「そんな事言ったらボクも同じですよ・・・。帰りたくても もう戻れないこんな世界なんて…。」
〔3〕
サクアキ「いや…この底から上へ戻れはするんだよ、手段が無いってだけで」
キナミ「…そう言えば六角の世界の眼もそんな提案してくれてたっけ。」
サクアキ「六角の眼…〚スズクハさん〛だな。」 キナミ「スズクハ…?」
サクアキ「彼女は俺達と同じTriangleの管理者だよ、六角の世界で監視を担っているIPを持った6号」
彼は地に埋まりながらも3人の会話を聞いていた事を打ち明けると ある疑問が飛び出しキナミと共に【提案】について考え始めた。
サクアキ「スズクハさんはこの世界からの脱出を提案してくれたんだよね?」 キナミ「え、えぇ。」
サクアキ「この場にある柱は破損したデータが詰まってるいわゆるゴミ箱で無くなってしまうと復元が出来なくなるんだ、この世界では倒れたり完全に使えなくなったモノは爆発したりするんだよ…。」
キナミ「爆発…」
サクアキ「そう、爆発…」
〔4〕〔5〕
サクアキ「爆発!!そうだキナミ今すぐ離れよう!危ないから!」
するとサクアキはハッと思い出しキナミに向かって注意を促すと急いで遠くへ離れようとする
キナミ「ど、急にどうしたんですか⁉」
サクアキ「さっき運んだトゥイルが爆発する!」
そう言われ急ぎ離れ振り向くと確かに2人で運び放置したトゥイルに異変が起きている《ビキッ》と大きなヒビ割れがトゥイルだったモノ全面に発生し凄まじい音が聞こえてくる。
〔6〕
《 ド ッ 》
トゥイルだったモノは大きな爆発音と共に弾け飛ぶと直ぐ側にあった柱を巻き込み強く眩いた
キナミ「あれは、一体…」
サクアキ「もう見飽きたと思ったけど、こんなに凄まじいのは初めて見たな…。」
〔7〕
爆発が収まり終えるのを遠目に見守りきると
キナミ「あの爆発は、何で、どうして起こったんですか…。」
サクアキ「Triangleに居る期間が長ければ長い程それに加えて完全に世界から削除される時バカみたいな威力が爆発として現れる趣味の悪い仕様だよ。期間が短ければ小さな爆破で済む、間近に居たから良く知ってる。」
キナミ「本当にどこまでも非人道的な構造をしているんですね…この世界は。」
呆れる様にキナミは溜め息をついているとサクアキの口から気になる話が耳へ飛んできた。
サクアキ「俺たち人間と違ってトゥイルやスズクハさんは人外、地球外生命体だから…」
キナミ「え、トゥイルって人間じゃないんですか?」
サクアキ「いや俺もトゥイル本人の口頭で聞いた話だから事実かどうかは定かじゃないんだけどさ。」
〔8〕
キナミ「トゥイルと初めて話したのって…?」
サクアキ「元々アイツはこの地の底に居たんだ、いつからってのは正直分からない。」
キナミ「サクアキさんが来る前から?」
ほんの一瞬黙り込んだサクアキは少し考えてから言葉を繋げる。
サクアキ「いや…【いつから】か。そう言えば俺がこの底に落ちてきた時に一応周りを見渡せたけどその時には居なかったな…。俺が完全に×型になった時、突然目の前に現れて…IPを奪っていった気がする。」
キナミ「サクアキさんが来るのを待っていたって事になりませんか…?」
サクアキ「キナミ君も同じ考えになるんだな、俺もその発想には至ったけど【都市】では俺の偽物が歩いていたんだろ?その場合、俺のIPはどうやって渡って行ったんだ…?」
〔9〕
謎は深まるばかりでいつの間にか考え悩んでいた頃
サクアキ「あ。」 キナミ「?」
サクアキはキナミに対して≪あるモノ≫を渡そうと手元を出現させ目の前に出して見せた
キナミ「サクアキさん?それって…」
サクアキ「あぁ忘れぬうちに今キナミ君に渡さないとって思ってさ。」
キナミ「それは、2号さんの…」
サクアキ「そうミオイさんが扱う棘、彼女の武器だ。」
〔10〕
サクアキ「これ俺が地面に埋まる原因にもなったんだけど、そんな事より」
キナミ「あの姿、棘で埋まってああなってたんですか…?」
サクアキ「こんな大きな棘が何処からか降ってきたんだ…勢いも相まって頭に直撃したら驚く程埋まりきってしまったんだよ、まさかこの世界に物理演算があったなんて信じられないね。」
キナミ「僕たちの身体ってもしかして軽いのか…?」
サクアキ「そんな事より!ミオイさんに何かあったのかい」
話を戻す為に喝が入れたあと再び会話を再開する。
〔11〕
サクアキ「どうしてミオイさんの事になると話を逸らそうとするんだ?」
キナミ「分からないんです、俺は。ボクはまだ意識がハッキリしてないんです、今のままじゃダメだって思っても無意識なのか故意で逸らしているのか分からないんです。」
サクアキ「この世界に来た時の後遺症か…、記憶に穴が空いているって言っていたね」
キナミ「でも…」 サクアキ「…」
キナミ「でも…数年間この世界に居て自分を思い出せそうなんです。トゥイルとスズクハさん…は自身の前情報もない他人の身体にログインしたから記憶喪失しているって言っていたけど、あと何か。何かが…。」
その言葉を聞いたサクアキは頷き持っていた棘をキナミに手渡すと
サクアキ「じゃあコレを抱いて自分と向き合っていこう、もし登っていくのなら丸腰じゃ危ないだろうしね。」
キナミ「…。」 サクアキ「目を逸らし続けているうちは真実は見えてこないよ。」
キナミ「サクアキさん…僕は。俺は、これから何をすれば良いんでしょうか…。」
手渡され受け取った棘を見つめ俯くキナミに向かいサクアキは一呼吸置いたあと
彼はキナミに1つ問う。
サクアキ「とにかく今は【前を見るんだ】キナミ君…、キミは『今』 何をしたいと考えてる…?」
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〚〚 20話 終わり 〛〛