
〔1〕
サクアキに見届けられ地の底からの脱出が成功したことで
六角の世界へ進む事が出来た緑の一角『キナミ』はついに【魂の保管庫】へ辿り着いた。
《ガッ》 棘を隅に刺し滑り込みの勢いを止めると彼は扉を前に立ち一息つく。
キナミ「此処が保管庫…。」
〔2〕
キナミ「ッ!!」
扉を開けるとキナミの目の前に待機していたのか黒い影がうっすらと振り返った
???「…やっと来てくれたんだね長い事待ってて良かったよ
キナミ「お、お前は…」
振り返る影に身構えると、また一口 奴は呟いた。
???「…でもまぁ、ほんのり待ちくたびれていたけどね。」
〔3〕
???「キミとこうして話すのは初めてかな。」
キナミ「お前はまさか、いやキミは…。」
CORPSE「改めて初めまして、ボクは『CORPSE』自分は『シカバネ』と名乗っているよ。
あの太陽が見える【展望台】でキミの目の前に居た『〇』がボクだよ。」
キナミ「キミが…、〇!?」
CORPSE「驚いた?ハハ、あの姿でも話す事が出来たけど計画が台無しになっちゃうからさ、喋れなくて退屈でいたんだ、でもキミはこの世界の為に忠実にボクを守ってくれた。」
キナミ「キミは一体何なんだ、計画ってトゥイルがやろうとしている事なのか…?」
CORPSE「そうだね…、順を追って話そうか、長い話になるから良く聞く事だよ。」
〔4〕
CORPSE「キナミ君は【コンピューターウイルス】って知っているかい?ボクはこの世界を破壊する為に造られた。それだけの存在なんだ、ボクはトゥイル達に従い動くただのウイルスなのさ。」
キナミ「〇の姿の時点でキミはコンピューターウイルスだったって事なのかい?」
CORPSE「…そうだね、キナミ君にはこの保管庫の壁を見てほしい」
そう言い奴は壁に触れると、それに反応し壁の向こう側が見え始める。
壁の向こう側には小さな六角形がフワフワと宙を浮かんでいた
キナミ「これは…?壁から見えるのは、魂か…!?」
CORPSE「そう。この六角形は皆このTriangleに保管された現世の人間たちの魂だ。ボクや他ウイルスが太陽へ向かうのを隠す為に騒動を起こすのに利用したんだ、だから今この保管庫の魂は少ないんだよ。」
キナミ「そんな…、なんて事をしてるんだッ!こんなに姿になっても皆生きているんだぞッ!?生きていたい人も何十も数百も大勢居たハズだ!」
CORPSE「…。」
キナミ「どうして黙っているんだ!この世界にいる人たちは命なんだ!」
CORPSE「ボクは、ボクは終わりにしたい。ただそれだけで彼らに従っているんだ
シカバネは引きつった話し方をして目をそらすと
〔5〕
・・・話を戻させてもらうよ」
もう過ぎた出来事を蒸し返す余裕も無かったキナミは奴の言葉通り話を戻す
キナミ「……シカバネはこの世界を壊す為ウイルスなんだよね…。」
CORPSE「…あぁ。」
キナミ「でもキミは俺と会った時太陽が見える場所【展望台】に居た、あそこは太陽なんかじゃない…それどころか行き止まりで道なんてもう見当たらなかった、どうしてあんな所に居たんだ。」
CORPSE「ボクもそれに関しては不思議に思っていたんだ、Triangleと同時にボクらはプログラムに組まれていた、テストだってしたし成功もした、だから実践に移した。でも結果は弾かれたんだ。」
キナミ「弾かれた…?Triangleに対策があったって事じゃないのか?」
CORPSE「ボクらはTriangleと同じ人達が作ったいわゆる『公式のウイルス』だ、物騒に破壊なんて言ってるけどサーバーを閉ざす為のキーなんだ、元々の用途から考えてボクらが居ないのに簡単にクラッシュされちゃこの世界に命を預けるなんて事は出来ない。そうでしょう…?」
奴の言葉でほんの少し正気が帰ってきたキナミも冷静になった。
キナミ「元々この世界の用途は実験の保留なんだよね。…確かに、変…か。」
CORPSE「勿論この事に関しては開発者トゥイルにも伝えたよ〖どうなっているんだ〗ってね、彼はそっぽを向いて知らんぷりだよ全く酷い話だよね?」
〔6〕
CORPSE「まぁ彼の事だから本当に何も知らないのかもしれないけど。それでも一緒になって考えてくれたって良いのに何も助言もないんだから困る話だよね。」
キナミ「あぁ…、それは大変な話、だね。」
CORPSE「結局わからず終いのままログアウトしてまたログインして展望台行き、そしてキミに会ったって流れだよ。本当に呆れちゃうよね、でもそのおかげかキミと地の底に落ちた時トゥイルから計画の変更を話された」
キナミ「計画の、変更…。」
〔7〕
CORPSE「さて、一通り話したところで場所を変えようか。驚くハナシ【魂の保管庫】はこのスペースのみで後ろの扉を潜ればお待ちかね五角形の世界【器の倉庫】になるよ。」
シカバネから提案を受けるとキナミは棘を真っすぐ奴に突き付ける様に構えてただ奴を見つめる姿勢になる。
CORPSE「キナミ君、戦うつもりでいるのかい?」
キナミ「俺を壊すつもりなんじゃないのか?シカバネはコンピューターウイルスなんだろ?データを壊すなんてのは容易い話なんじゃないか?」
CORPSE「…そうだね。でもその棘は身を守る武器、その逆さに大切な人が生きているという確信を得る為の命綱の様なモノなんじゃないのかい?」
「少なくとも今戦ったらボクの頑丈さでその棘は傷つくだろうね。」
そう言われ棘を見つめ直す中、シカバネはゆっくりとキナミに近づいていく
キナミ「確かにこれはミオイさんの棘だよ、無断で使ってる様なモノだしシカバネの言う通り傷ついていくものだとも思うよ。今でも俺はあの人に守られているんだとそう感じているよ。」
シカバネはキナミの言葉に頷くと
CORPSE「朗報かは分からないけど、ボクがキミと地の底に落ちた時トゥイル以外の人が居たんだ、その人からはミオイさんは生きているって話だったよ。」
キナミ「!、それは誰なんだ⁉」
CORPSE「ボクとトゥイルも知らない人だったよ、まだ管理者っていたんだね」
キナミ「管理者?サクアキさんじゃないのか!?」
CORPSE「サクアキは×型になっていたしスズクハは外からの監視だったし正直な所ボクは知らない人だったけどトゥイルよりもこの世界の状況を知っていたよ、彼はキナミ君を待っているってさ。」
キナミ「俺を待ってるって、どうして?」 CORPSE「さぁ?ボクに言わないでよ」
そう言いながらシカバネはキナミに近づき終えると改めて提案を聞いた
CORPSE「さてキナミ君、もう一度聞くよ。【器の倉庫】に行かないかい?どっちみちキミはボクが居ないと先へは進めないからさ…。」
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〚〚24話が終わり、25話へ続く〛〛