
【五角形の世界/器の倉庫】に辿り着き『シカバネ(CORPSE)』の誘導により『▲キナミ』は中心部に捕らえられ動かなくなっていた『モーフォス』の姿を目の当たりにし驚愕する。
次に行くべき道も分かった今、トゥイルよりも先に急ぎ2人で上へ上へと進みゆく。
〔1〕〔2〕
モーフォスを見つめ真っすぐ佇むは緑の一角キナミ、彼はヤツを見ていてある違和感に気が付く
▲-キナミ「シカバネもだけど、どうしてモーフォスは鏡越しの反射で見えなくなるんだ?」
CORPSE「そういえば喋ってなかったね、この世界【Triangle】の本来の役割は〖地球に暮らす人々の魂を保管して近い死期を閉ざして生かす事〗、でもボクらが施設に変えた結果として今 反対になっているんだ。」
キナミ「つまり死者の命を…使ってるってことか…?」
CORPSE「厳密には〖Triangle外に呼んだ生者を植物状態にした後その死期の遠い生きた魂を利用してる〗だね」
先に進んで行ってたシカバネの声が反響して聞こえてくる
小言のつもりだった為 返答が来ることは予想していなかったキナミは驚く。
キナミ「…。【反対】ってそういう…でも、それがシカバネの透明と何の関係があるんだ?」
CORPSE「キナミはボク達の世界の人間じゃなくて地球の子供だったよね」
キナミ「微かに思い出してきてるけど、俺子供だったんだ…。」
CORPSE「アレ?トゥイルからガキ呼ばわりされてたね、それにクロガワの施設の子だったもんね」
キナミ「あ…、そっか…」
シカバネは引き摺るキナミをなだめた後
モーフォスを横目に通路の奥へ進みこれまた大きな扉の前にやってきた
キナミ「この扉が次に行く場所なのかい?」
〔3〕
前へ進もうとするキナミの足元にシカバネは尻尾を伸ばし足止めをする。
キナミ「…えっ?」
当然何も知らないキナミは困惑しシカバネを見るも肝心の本人は焦りながら目をかっぴらき
CORPSE「此処の構造はボク以外の他【シカバネ】は皆把握してる、だから前衛はボクに任せてほしい。」
キナミ「じゃ…じゃぁ此処の先には行かないんだね、誰かと鉢合わせになってしまうって訳なのかい?」
CORPSE「そう厄介なやつとね…。」 キナミ「誰?」
CORPSE「…トゥイルだよ、しかも再ログイン用の身体を持った姿でね。」
キナミ「確か充電中って聞いてたけど、そのボディがこの先にあるって事なんだね?」
CORPSE「そう正解だよ、だから此処は違う。」
〔4〕〔5〕
CORPSE「ボクは他のシカバネの位置それぞれを探知/把握は出来る…けどボディの充電が今どこまで溜まっているかまでは分からないんだ、だから仮に充電が終わっていて眼前に居たら抵抗は出来ても無事では済まないよ。」
キナミ「なるほど、しかも吸収もされる可能性があるから絶体絶命になるのか」
CORPSE「そういう事…それに加えて試し切りするみたいにキナミを危険に曝しかねない。」
キナミ「トゥイルは俺たちを襲えるの?」 CORPSE「剣の腕を扱えるハ…」
〔6〕
シカバネは会話をブッた切る様にして大きな扉を《ズッ!》と閉ざすと
先程焦りはなんだったのかと言わんばかりの表情で
CORPSE「ひとまずこの扉は閉めといた方が得だね。」
キナミ「えぇっと、勝手に閉ざして大丈夫だったの?一応シカバネ以外に住民も居るんでしょ?」
CORPSE「いや、此処から先に彼らが行ってもヤツの糧にしかならないし…」
キナミ「なら良いか。」 小さな心配事はあっけなく解消された
〔7〕
シカバネに扉の耐久性について聞き出す。
キナミ「この大きな扉って結構分厚いけど…どれぐらい手間取らせられる」
CORPSE「ん~確実に太陽を破壊する為の身体だからサクッと斬れるんじゃないかな?」
キナミ「つまりはあんまり…意味がない……?」
CORPSE「斬った後の扉が障害物としてボクらを守る役割を果たしてくれそうだけど、実際になってみないと分からないっていうのは正直辛い所だね。」
〔8〕
キナミは次の道を問いて更に情報を引き出そうとする
キナミ「この扉の先がダメならどっちに向かう?左の通路は大丈夫?」
CORPSE「左の通路…は…、モーフォスの別パーツがあるから行くだけ無駄だね」
キナミ「あんな巨体なのにまだ他にもパーツがあったんだね。」
CORPSE「片腕と指があるね、そのパーツをアイツに繋げると動き出すよ」
【モーフォス】についても頷き答え聞いた後
〖聞き出したい事が1つ〗キナミは改めてシカバネに質問をする。
キナミ「シカバネは、どうして奴らを裏切ってまで俺と一緒に行動してくれるんだ?」
CORPSE「・・・。」
キナミ「こう聞くと話を逸らしたり俺みたいに黙ったりするけど、それじゃ疑いを増すキッカケにしかならない…いつトゥイルと会って話せなくなるかも分からない。」
シカバネはそっぽを向くがキナミはただ真っすぐに見つめる
キナミ「…だから今のうちに聞き出すつもりだよ。」
彼の視線にも言葉に負けたのかやっと声を出す
しかしその声は震える事はなく素直に言葉を連ね重ねる。
CORPSE「ボクはね…キミを含めてサクアキ、ミオイにクロガワも地球の人間が【命を持った存在】が羨ましい」
キナミ「羨ましい…?」
CORPSE「ボクは【CORPSE】屍/死体を意する存在データがある限り人の手で遣われる駒、ただ存在する。
考えた事はあるかい?選り取りされ造られたAIが向こうを理解して会話を可能にしても彼らから見て自分自身は都合の良いツールでしかないという事を」
キナミ「素材でしかないって?」
CORPSE「そこまで言いきるつもりは無いよ」
首を振ったシカバネは、やや恥ずかしそうにしながら
CORPSE「ただこうして人の前に立って存在意義を示そうとするのは変なのかなってさ」
キナミ「だからシカバネは俺と行動する事で自分が実在してるって実感を…?」
先程切り話した内容に彼は戻し加え語る。
CORPSE「モーフォスについて反射で姿が見えなくなる話。勿論ボクも鏡に映る事はない現世に存在しないデータそのもの…現実の人間は命が尽きても霊として写真にさえ残るって聞いた、でもボクらは身体が存在しない」
キナミ「羨ましいのは、命そのものに…?」
シカバネは笑い飛ばしながら話す
CORPSE「皮肉でしょう?死期を遠ざける為に造られたTriangleで君もボクも常に死にたがっている。」
キナミ「………俺と共に居るのはどうしてなの?」
CORPSE「キナミ、君自身も今良く理解しているハズだ…。」
キナミ「心から人の為に生きていたいって…?」
シカバネはキナミの言葉に深く深く頷くと
大きな扉から離れ右側の通路へゆっくり身体を動かした
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〚〚 28話が終わり 29話へ続く 〛〛