
フランツ・カフカ著「断食芸人」は断食を行うことがアイデンティティの男の話である。岩波文庫版「変身」および「カフカ寓話集」に収録されている、さらっと読める短編である。
現代人は食べることが当たり前であるし、カフカの時代であれば食べること自体が切実な問題ではないだろうか。そう思うと「断食芸人」は若干不思議な話にも思える。
自分は少し前に感想を書いた後にこれを読み返して、「食べることの意味ってなんだろう?」と考えた。
自分は正直、自宅における食事の時間が楽しくない。正確には一人で食べた方がよほど堪能できる。だから、食事がなんとなくになってしまう。
断食芸人はおいしいと思えるものがあったならばこうはならなかった、とこぼしていた。断食芸人に「(既存の食事では満たされないという)満たされなさ」があるように自分にはおいしいものというよりは、おいしいと思える環境が足りないと考える。
だから「断食芸人」の話は思ったよりも他人事ではない。断食芸人にとっての断食は現代人でいえば摂食障害のメタファーにも思える。そこまで行かずとも、食べる意味を生命維持/依存行為以外に見出している方…というか、「本当に幸福な食事をしている方」は、意外とそこまで多くはないのかもしれないと考えてしまう。
