暑い日が続き各地で海開きが行われている。
私は砂浜で打ち寄せる波に足の周りの砂が流れていき、あの足の指がこそばゆくなる感覚をもう一度、味わってみたい。
ザァーサーザァーサー♪
遠い昔、私は魚だった。
ザァーサーザァーサー♪
海の中を飛び跳ねていた。
ザァーサーザァーサー♪
波が押し寄せ引いていく。
ザァーサーザァーサー♪
強い力、弱い力。
ザァーサーザァーサー♪
波にさらわれそうになり、私は両足に力を入れた。
ザァーサーザァーサー♪
海の歌が聞こえてくるようだ。
ザァーサーザァーサー♪
こんにちはとさようなら。
ザァーサーザァーサー♪
生まれては消えていく。
ザァーサーザァーサー♪
くりかえしくりかえし。
ザァーサーザァーサー♪
朝は来て、夜は帰る。
ザァーサーザァーサー♪
何も無かったように、月日は流れる。
私は片マヒだから砂に足がとられ、浜辺に出ることさえ出来なくなってしまい、もう叶わないことだと諦めている。
太古の時代、私たちの祖先は海から来たという。
海にはせる思いは私がそこから生まれてきたことを思い出させるように深まっていく。
いつの日にか海に帰るその日まで・・・・・。