原作:幽刻ネオン 立ち絵:花の月様 ※アイキャッチ、立ち絵GeminiAI AI学習禁止
※この物語は、短編集【怪異たちの楽園】の書き下ろしです
※Attention この物語には一部流血、ホラーな描写があります。また実在の団体、事件とは一切関係ありません
Prologue
これは、一人の青年がとある怪事件を解決してから一か月たった物語。
山奥にそびえ立つ、一軒の古びた古城。
薄暗い寝室で、ベッドでそれぞれ就寝していたころ。
時刻は丑三つ時を示す午前二時半。
彼は、大きな罪を犯した人間。
実際に犯罪を犯したわけではなく、心理的な罪を背負う者。
そんな罪人を憎たらしい、でも心の底から愛している者がいる。
今宵も探し続けるモノがいた。
「父親として俺の責任を果たせ。見つけたらすぐに問い詰めてやる」
大きな足音が鳴り響き、鎖をひきずる耳障りな音が響く。
赤髪の男には、シルバーチェーンの鎖が繋がれている。
だがこれらは普通の人には見えない。
なぜなら・・・・・・。
ドスドスと大きな足音、化け物は今宵も親を探し求める。
Episode1

「あの映画、ちょっと怖かったけれど面白かったなあ」
季節はもう十月上旬でハロウィンが近い。
私は映画を見終わった帰りに駅から出ようとしたところ。
観てきた映画のジャンルはホラーで外国のとある名作だった。
「主人公のやったことは許されないけれど、悲しい話ではあったよね」
結構グロテスクな内容でネタバレになるから言えないのだけどね。
(それにしてもあの事件からもう立つのか。早いなあ)
私は、岸田相馬です。
フツーの大学生だけど、ひょんなことから『妖魔捜査官』として活動中。
まあ簡単に言えば、心霊事件や怪異絡みの厄介事を解決する探偵とはまた違った組織。
一応バイトとして働いており他の人には内緒で活動しているの。
一個上の先輩も妖魔捜査官なんだけど、少し尊敬しているんだ。
すると、私のスマホの着信音が鳴り思わず開く。
あの人は私の上司にあたる人なの。
高校生みたいで、お人形さんみたいで可愛らしい女の子だけど成人している。
心霊捜査官の黄昏リリカさん。
「もしもし? どうかしたんですかこんな時間に」
「こんな時に悪いわね。相馬には今すぐ事務所まで来てほしいのだけれど」
彼女は、怪異を取り扱う心霊心理的事件を取り扱うエキスパート。
『怪異対処課』と呼ばれる妖魔捜査官として活躍。
結構大変なんだけれど、人助けは好きだから。
「丁度この後ヒマなのでいいですよ。また変なお仕事ですか?」
するとリリカさんの声色のトーンが低くなり私は身震いした。
「とりあえず来て頂戴!話はそこでするから」
なんか、怒っているようにもきこえたけれど・・・・・・何かあったのかな。
私は急いで彼女のいる事務所(アンティークな一軒家)に向かった。
走っていると、急に何かがぷつんときれたような感覚がした。
(なにこのイやな感じは・・・・・・それに悲しくなってくるような)
霊感に目覚めた私は、副作用として様々なところで勘が鋭くなっちゃったの。
だけどこの気配は、以前の事件と同じで【違和感】を感じられる。
(さすがに偶然だよね)
~数分後~

「ええっ!? 私が、救出作戦!?」
「全く嫌な話だわ。しかも依頼の内容がセンシティブなのよね」
事務所の書斎で私とリリカさんは一枚の手紙に書かれた内容を読み解いていた。
ここに到着してからというもの珍しく、リリカさんのご機嫌が優れずイライラしていた。
そのイライラしている内容というのが。
【現代のヴィクター・フランケンシュタイン博士、閉じ込められる】
「不死身の怪異に対処する仕事よ。今回は人間の手が加わった最悪なケースね」
「しかも物語に登場する主人公の肩書きの圧がすごいなあ・・・・・・」
怪物を生み出した博士のこと。
普通、人間が被害者に依頼するのだが逆に人間がかかわるケースははじめてなのだ。
不死身の怪異ときいて何を思い浮かべるだろうか?
ヴァンパイア、キョンシー、エルフ、神様など。
人の手が加わるということは、何か罪を犯したのかという話だろうか。
「でもこれって、リリカさんが引き受けるべきなのでは?」
「そうも言っていられないのよ。霊子も別件で動いているから」
先輩も何か事件を解決しに行ってるんだ。
Episode2
「いわゆる人質状態ね。自業自得だわ。相馬には、彼らの救出をお願いされているの」
「じゃあ、私【たち】でさっさと解決していきますよ」
その時、リリカさんが両手をバッテンのポーズで首をふる。
え?何かまずいこといったかな。
「今回の任務は、あなた一人で向かいなさい。相棒は連れていけないわ」
「えっ? どうして・・・・・」
「怪異の力に頼ってはダメ。相馬自身が解決して真実と向き合いなさい」
実は私に憑りついている怪異は、韓国人形のジェジュンとツギハギ怪物のヴォルフ。
たしかにふたりは似ているし暴れかねないか心配。
でもちょっと、かわいそうじゃないかな。
「ふたりは望んで怪異になったわけじゃない。だったら」
「それでも今回はダメ。霊子も同じ条件で出動したから」
リリカさんは別に私を怒らせたくて言ってる感じじゃないみたいね。
心配しているんだろう、命にかかわる仕事だから。
「じゃあふたりはどうするんですか。まだ憑いているかと」
「心配しないで。彼らの事は私が面倒をみるわ。少し身体が軽くなったんじゃない?」
そういわれてみれば確かにそうだ。
声もしないし、いつもの束縛的な霊的気配も感じられない。
リリカさんってもしかして魔法使い?
「本当に私、一人で古城に向かうんですか?」
リリカさんはこれ以上は何も言わず、ニコニコ笑顔でお泊りグッズを渡す。
(大丈夫かな、これ)
