金魚叔父さんと私

 父親の弟である叔父さんは魚釣りが好きで、小学生の頃 は川で釣ってきた鯉を

しばらく水槽で泥抜きをして薄切りにした身を氷水で洗い、酢味噌で食べさせて

くれました。

 とても手先が器用で、枯れ木に花を咲かせるのだと、ティッシュで花を作り満

開の花を咲かせていました。

 その叔父さんの自宅には水槽が沢山あり、鯉だけではなく金魚が何十匹もいま

した。

その金魚が東日本震災時に水槽が全て破損し、金魚を飼育する容器が亡くなって

しまい困り果てて、お風呂の浴槽に水を張って金魚を放したところ、奥さんがそ

れを知らずにお風呂を沸かしてしまい金魚が全滅してしまったと、嘆いていま

た。

私は不謹慎にも

「それは良い出汁がとれた。」

と言いそうになり、叔父さんの気持ちを傷つける様な事は言ってはダメだと思い

「大切にしていたのに、残念だったね。」

というしかありませんでした。

 それから10年、先日、叔父さんの奥さんが癌で亡くなり、叔父さんは東京に住

む娘のところに引っ越す事に成りました。

 80歳代の叔父さんは器用だとはいえ、娘さんとしては父親を一人暮らしをさせ

る訳にはいかなかったのです。

私は

「娘さんのところに行けば心配は無いし、実家には何時でも帰って来られる

し・・・。」

遠くに住んでいる娘さんの気持ちを考えると、無理に止めるわけにはいきません

でした。

 私は叔父さんに金魚の絵を描いて、クッションにプリントをして、叔父さんプ

レゼントをしました。

叔父さんは良いお土産が出来たと喜んでくれました。

 しばらくして、娘さんがメールをくれて

「ここから、東京スカイツリーが見えるんだよ。」

と周囲の環境が分かる写真とソファーに座って、くつろいでいるおじさんの姿を

送ってくれました。

 それを見た私は

「さすが、私の叔父さん、自由人だわ。」

とほっとしました。

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なないろびと

絵と小説をこよなく愛すおばちゃんです。 日々、コーヒーを飲みながら、創作の世界に旅に出ます。 旅の途中で、いろいろな発見があり、出会いがあり、挑戦があり。 雨上がりの空に架かる虹のように、一色に染まらない人でいることを心掛けています。

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