次の雨の日には神田が来ることは無かった。
「あれは社交辞令か・・・。」
本気にしてしまった自分が情けなかった。
「確かに一人で食べるチェリーパイはちょっといつもより、美味しく無いや。」
二人で食べる事の意味を噛みしめる優日でした。
「日常に戻っただけだものね。」
そう、自分に言い聞かせていました。
それから、1カ月、カンカン照りが続き、優日が次にカフェに行く日は伸びて行った。
再び優日がカフェに行った日は嵐で、外を歩くのもおっくうな日だった。
「もう、何ていう日なの?」
傘も風に持って行かれる様な暴風雨だった。
いつものように、注文した優日は席に着くとびしょぬれの髪を拭き、冷え切った身体をココアで温めていた。
その時、雨の中を猛ダッシュで走って来る人影があった。
神田であった。
優日の姿を見つけると
「優日さん、今日はチェリーパイじゃないんですか?」
「あ、体が冷えて。」
まさか、一人で食べるチェリーパイが美味しく無くなったからとは言えなかった。
「今中間テストで、ここ1カ月忙しくて来れません出した。」
「ああ、先生ですもんね。」
「今日は悪天候で、臨時休校になったので行くしかないなと。」
「はぁ、そんなに無理しなくても・・・。」
「優日さんに約束を破ったなんて思って欲しくなかったから。」
確かに、約束を破られたと思っていた。
「そんなことないですよ。お仕事忙しそうだし・・・。」
ちょっと、優日はウソをついた。
そんなにこだわることは無いのになぁと思った。