「ねえ?時間、計ってくれない?」
「あっ!はい。」
「リレーの選手に選ばれたから、1分切りたいんだよね。」
そう言ってキミはストップウオッチを私に預けた。
私は宝物を預かったように大事に両手で受け取った。
トラックを1周して戻ってきたキミは言った。
「何秒だった?」
「えーと、1分5秒ですね。」
「えーっ!あと5秒かー?」
残念そうに汗を拭うキミ。
「もう1回計って!今度こそ切ってやるぞ。」
あの時、キミは1分切ったら、私に告白しようとしていたことを後で知った。
「懐かしいね?」
「ホントに青春だったね?」
それから、40年後の今、あの時のキミと違う君を見ている。
私は君が走る姿を見ている。
もう、時間など気にならない。
二人の間に流れる時間は早くもなく、遅くもなく、ちょうどいい。
慌てず、急がず、時には立ち止まり、走れなくなった私を待ってくれる。
そんな君と出会い、一緒に過ごし、手を繋ぎ、笑って生きたい。
永遠に・・・。