花散らしの雨 1

桜が満開の時に、雨が降ることがあります。

せっかく咲いたところなのに、美しいその姿を台無しにしてしまう雨。

人の人生もそうではないでしょうか?

人生で一番、輝いている時に限って「どうしてこんなことが?」と言うことが起きて、生き難さを感じてしまいます。

 桜花もそんな人の一人でした。

木山桜花はことし32歳を迎える看護師でした。

でしたというのは5年付き合っていた彼を後輩に略奪され、同じ職場にいられなくなったために、別な道を進むことにしたのです。

 そんな、桜花には夢があります。

小児科にいたこともあり、子どもたちの心をいやす絵本つくりをしたいということでした。

桜花が絵本を作ろうとする時、物語は書けても肝心の絵が描けないという問題がありました。

そこで、桜花は自分が書いた物語に挿絵を描いてくれるイラストレターを探す為にSNSで募集することにしました。

『私の物語に挿絵を描いてくれる方を県内外を問わず募集しています。ぜひ、お願いいたします。』

直に、反応が来るとは思いませんでした。

「木山桜花様、僕は絵を描いてSNSに発信している板垣樹と申します。ぜひ、僕に貴方様の物語に絵を描かせてはくれませんでしょうか?僕は県内の公務員をしながら創作活動をしています。』

「板垣樹様、早速の募集、ありがとうございます。一度、お会いして板垣様の絵を見せていただいてから決めたいと思いますので、ご都合に良い日をご指定ください。当方、現在、失業中の身の上ですので、お気づかいは無用です。」

「分かりました。近日中にご連絡申し上げます。」

こうして、木山桜花と板垣樹は初めて出会うこととなりました。

それが、永遠と続く愛に繋がるとはこの時、まだ、二人には分かっていなかったのでした。

「初めまして、木山桜花と申します。」

「初めまして、板垣樹と申します。」

「さっそくですが、お互いの作品を見ることに致しましょうか?それからです。作品同士の相性がありますから。」

「そうですね。こちらが当方の作品になります。」

「ではこれが、私どもの作品となっています。」

二人の間にしばしの静寂が流れました。

「どうですか?」

「正直、驚きました。モチーフが同じなのです。」

「月と猫ですか?」

「はい。そうです。」

「私もそう思いました。まるで最初から一緒に作品作りをしているような気分です。」

「そうなんです。まるで、打ち合わせをして制作したような感覚です。」

「直にでも発表出来そうなのですが。」

「そうですね。細かいことを調整しながら進行していきましょうか?」

「よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくおねがいします。」

こうして、二人の共同制作が決まり、順調に進んで行けるはずでした。

 物事には困難が付きまとい、それが障害となり、最悪、消滅してしまうこともあります。

二人の間にはその困難が襲って来ました。

 あれはそろそろ印刷に入ろうかと言う時のことです。

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なないろびと

水彩画中心に絵を描いています。 先ずはやってみることが、私流です。 日々感謝の毎日です。 少しでも、みなさんに幸せを届けられますように・・・。

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