仙台の秋と言えば「jazzフェス」です。
街中をjazzの音楽が包み込みます。
そんな秋の恋のお話です。
地元出身の秋本 楓というjazzボーカルの女性がいました。
20代の頃は東京の専門学校に通って、本格的なデビューに向けて頑張っていました。
しかし、東京には楓より上手なボーカリストはたくさんおり、彼女は挫折をして故郷に戻って来たのでした。
jazz喫茶でバイトをしながら、たまに歌わせてもらっていました。
「jazzフェス」のことを聞いた時には大変喜びました。
枯れ葉が舞い散る寂しい時期ですが「jazzフェス」は好評でした。
いつもはお客様のリクエスト曲しか歌ってこなかった もみじ はフェスでは自分の好きな曲を歌うことにしました。
「コーリング・ユー」「サマータイム」などは定番で、楓は映画「Modern Times」で使用されたテーマ曲で、チャップリンが作曲した「Smile」が好きでよく歌っていました。
※以下、歌詞和訳
「Smile]
笑顔を心が痛むときも
笑顔を心が折れそうになるときも
空が曇りのときだって
なんとかなるさ
怖くて悲しくても
笑顔なら
笑顔なら
きっと明日は
太陽が昇り
キミの為に輝く
喜びで表情を明るく
悲しみの跡を隠して
涙がこぼれそうでも
さあ続けてみよう
笑顔さ
泣いたって仕方がない
きっと分かるさ
人生まだ捨てたもんじゃない
ただ笑顔でいれば
そんな 楓の歌を静かに聞いている紳士が一人いました。
南城 洋介、58歳。
去年、奥様が亡くなり、傷心で街を歩いていたときに楓の曲を偶然、耳にしました。
それまで、笑顔を忘れていた洋介は「Smile」と言う曲に心を奪われてしまいました。
歌詞に合った優しく暖かい楓の歌声に惹かれたと言っても良いかもしれません。
洋介はお店の方にも顔を見せるようになり、いつしか、楓に身の上話をしていました。