〔1〕
『騒動の裏』暢気な会話を続ける2人組…ただそんな架空に現実が近づいて来るとはつゆ知らず。
5号に突き刺さった棘を引き抜いて床に散らばる欠片を頭部に当てはめて2号は包帯を取り出し彼に巻き付けた。
2号「…これなら大丈夫かな、突発的に起きた事だしこれは応急処置みたいなものだから一応は安静にしといた方が良いからね。」
〔2〕
しかしここで気になる話。
5号「あの2号さん…これ大丈夫なんですか、だいぶ覆ってますけど俺の番号見えてますか?」
2号「しつこい様だけど私の名前は『ミオイ』だよ、身内なのに忘れようとするその言動本当によくないよ。
さっきも伝えたけどこの世界のじゃなく現実から持ち込んだ物だから、あーーこりゃ見えてないね…。でもよく考えたらキナミの胴体はライトグリーンだし他にその色の▲は居ないし大丈夫なんじゃない?」
5号「確かに自分だけの色だから問題はないのか…ところでミオイさん、その手に持ってる欠片は?」
〔3〕
彼女の手に欠片が1つ握られているのを見つけ指さすと2号は答えてくれた。
2号「これか?上手く収まらなくてさ。表面上、貴方自身に問題なければ暫くは私が持ってるよ。」
5号「今の所は大丈夫です人格が変わる訳でもないし。」
意気投合して間を空けた後、5号が連れてきた○に視点を切り替えて話を進める。
2号「さてメタい事だが物語を3つ進めたところでやっと触れられるな、彼の事に」
5号「そうですね引っ張っといて特に意味ありませんでしたしね。」
〔4〕~〔5〕
傍らに佇む○を横目に質問する彼女の姿に5号は息を吞む様に答える。
たとえ色が青くとも身内であれど彼女は上層部の一人である事に変わりなく、先程の柔らかな雰囲気を感じさせない冷徹さが窺える。
2号「○の住民が▲の世界に来るのはシステムが受け付けないハズだ、何処で見つけたんだ?」
5号「この都市から少し離れた【太陽が見える場所】です、異常があったとの報告で俺が見回りに行ったら彼が起き上がるのを見掛けました。」
2号「太陽が見える場所…、まさか【展望台】か?」
5号「展望台なんですか……?」
【太陽が見える場所】が【展望台】だとわかってから、部屋の真ん中に立った2号は真上に向かって指さしながら2号に確認を取りながら話を続ける。
2号「貴方も知ってると思うけどあの場所は『上層部である▲が保有している』所なんだよ、ただカメラがないから上層部が管理場に行かないとなんだが1号が居ない代わりに貴方が向かったのか…管理場は位置的に私の部屋の真上だったかな。」
5号「それは情報が回ってたので知ってました俺や3号みたいに下層部の緑が行く場所ではないと思ったので、徒歩で向かったんですがまさかアレが彼処が展望台だとは思わなかったです。」
2号「まぁ確かに見映えが悪いし太陽しか見えないからね、でもそんな出入口のみの場所に○が居たなんてやっぱり… 」
〔6〕
長々と話を続けていると《パキッ》という音が通路から響き渡った事で、その音を聞き気付いた2人は会話を中断し部屋の扉に視線を傾け驚いた。
〔7〕~〔8〕
2号「キナミの反応、私と同じく音が聞こえた様ね?」
5号「はい…ガラスみたいな何かが砕けた音がしました、アレは一体?」
扉の奥更に向こうを見つめていると黒い影が通り過ぎていくのが見えた様な気がしました、勿論それは見間違いではなく確実に○を含めた3人がその存在に気付いていました。
5号「に…ミオイさん、扉の先に…。」
〔9〕
2号「わかってる…せっかく懐かしく長話が出来ると思ったのに現実は許してくれない様ね…。」
棚を足場に収め扉のスイッチを押すと《ズズズ…》と通路の空気を遮断するようにして閉まっていきました。
5号「ミオイさん、アレは一体何なんですか?」
2号「予想が合っていればの話だけど戦闘形態の1号かもしれないわね侵入者撃退の為に彼は身体を変形させるのよ。
でも変ね…1号は身体を変形する際にパッキリとした音は鳴らないむしろ機械的にカチャカチャするモノよ」
5号「じゃあ1号さんの偽物が…?」
2号「まさか!私達のナンバリングは固定!しかも色はカスタマイズで変更可能で見た目が変わる事はないわ、現にさっき貴方たちが来る前に試していたし…。 そんなまさか、あり得ない話じゃないな。」
〔10〕
《ガチャン!》と扉が閉じきると2号は違和感を持ち始め、1号と思わしき人物が来た時の対策の為に○の話を途切れさせ5号に別の話を持ち掛けました。
2号「キナミ!彼の、えぇと…○の話は終わりだよ!取り敢えず今はアイツが来る事を想定して話を進めましょう」
5号「で、でも1号さんが来てからは遅いですよ!」
2号「いや遅くて構わないわ…1号であれ別であれ結果は変わらない。
やっと○の違和感に気付いた…、貴方にとって専門外かもしれないけど心を痛めながら追求するしかない」
〔11〕~〔12〕
一方閉ざされた扉の向こう側、大きな塊がただひたすらに声を一言も放つ事もなく《バキッ》《パキ》と順々に繰り返し2号の部屋へと続く長い長い通路にて全身から音を立てながら前へ前へと突き進む、ある1体の存在がたった少しの時間で割れていき段々と壊れた者に変化していく。
先程まで赤く空っぽだった通路から黒い生命体の川になり果てる。