架空文書

徒花の木の麓にある茨。

祝いの言葉が絶えず離れられない呪い※繰り返し

憂いにさえ心が入っているのに。

嘔吐いてしまった優しい声で。

終わりが向かってくる、自分から終わりに向かうのではなく。エンドロールはいつだって自分が決める側ではなくて勝手に決められている。映画の終わりに表示される人名で埋め尽くされたスタッフロールすらまともに見れないのに、自分だけ自分ばっかり。自分にも終わりだけが等しく訪れる。

カタルシスが全員に備わっていたならこうはならなかった。

「気味が悪い」と言い続けられた案山子は何も語らず。

クイナは澄んだ青を見ずに澱みきった水面に堕ちた。

警告の看板を無視して突き進んだ見晴らしのいい柵の上。

孤独を感じたくなかったから誘った。目的が死ではなく生に生かされていると感じたから、今度は生きないといいねって約束だってした。もう約束を約束で補わなくてもいいように。死んだ人は星になるなんて、もう存在してほしくないおとぎ話。生きるべきだったのは現世ではなく数多の星のうちの一つだったのだ。悪人もあの眩い星になれるのかな。

蛹の中のドロドロに変形した芋虫だった形成の眼模様。

朱肉みたいに錆びきったばっかりの液体。

誰何を読んでも返事返らない。

刹那では何も言えなかった。

「そして」で始まる文章はいつもと言っていいほどつまらないものだった。文と文の間を紡ぐ接続詞でしかなく、大抵は作文の時の文字数を稼ぐために用いられる。20×20の400字詰めに対して使用し現実での日常会話に必要はない。己もそういう風な人間になれたらいいと思った。型にはまらない人間だと思っていたのに実際は型の外側の存在だったことに気付いた。熱を吐き続けたコンクリートと冷えた体。

黄昏時にだけ集る人だったものの群れ。

鬱金香の球根が肺へ吐き捨てた。

土が赤色に湿る。元は乾いていたはずの地脈。

手と伸ばせ伸ばせども最期には届かなかった。

桃源郷なんてあるはずがない。そんなものがあったら、全員その郷にいるはずだから。皆自分の故郷こそが桃源郷だと思い込んでいる。自分の生まれた土地を尊いものだと思っていないとやっていけない。自らを正当化するように、己の住処を肯定しなければならないように。

何故か縮んでしまった端子。

鈍色の花畑、誰一人としてその花の色は当てられない。

塗り絵と一面真っ黒で埋め尽くされた片側の項。

寝袋に封じ込められた輝かしい夢と希望。

脳から直接的に送られるノイズ。自己防衛のための砂嵐。動画編集中に突然差し替えられたエフェクトみたいにバグでの軌道修正が行われている。自分の人生も嫌な部分を切り取ってCtrl+Z(一個戻る)、Ctrl+C(コピー)とCtrl+V(貼り付け)を繰り返したい。揺り籠から墓場まで完璧で存在していたい。動画のどこを切り取っても完璧で、不要な部分は切り取って、その僅かでも残された数秒程度の人生を見てもらいたい。

爆ぜた。形として存在していたのに。

秘密基地が表す秘密の場所。大人になったら立ち入り禁止がかかっていた。

藤棚の隙間から甘ったるい刺激物が鼻を劈く。

片頭痛が起こった時にだけ現れる雨音。

放置されて腐った遺灰。既にぐちゃぐちゃだった身体が炎に包まれた時、950℃の個室に入れられて、花や硬貨思い出の品と共に無くなる。この世から最初からなかったみたいに。結果はいつも死に向かうのに生は必要なんだろうか。生なんてものがあるから死もあるんだろう。最初からそんなものがなかったとしたら、こんな考えになんかに至らなかっただろうに。結果はいつだって望まない形で終わる。

微睡みがじっと見つめている、針先の12の字を。

みなさんが静かになるまで、ひとりの生涯が終了しました。

無駄の蓄積で賞味期限の切れた年齢。

メモ帳の裏に書かれた表の文字。千切った時それがどちらなのか分かりやしない。

戻れど戻れども強制的に進んでいくストーリー又はページ、この文字を目で追えば追うほど自分の人生が消費されていくように感じるだろう。今読んでるこの話だってそう。もう戻れないもう戻れないもう後ろには歩けない。逆再生機能は最初からなかった。後から前に起こった事項に後悔したり、後悔したり、後悔したり、後悔だらけの人生。生きて消耗品みたいにすり減っていった。

 「「「「「やめとけばよかった」をやめないで」をやめない」をやめたい」をやめた」

許しを乞うと憂鬱。許せない乞いと優越感。

4回進む。前にも後ろにも進めない人生ゲーム。ずっと休み。お札も職業も家も保険も何もない空白の1マス。ゲームオーバーすらないからどうやったって攻略の手段が見込めない。

ら抜き言葉の「ら」が存在しない単語。

理由を庇う為の言い訳。荒唐無稽な法螺話。

瑠璃色の柘榴。真っ二つになった幻の果実。

例として首に表示された切り取り線の肉と皮。

狼狽する。午前4時59分。丑三つ時の次の次の次の次に不吉な時間。天国と地獄はないと思うけど、黄泉の国だったり死後の夢の世界みたいな存在は必要なんだと思う。そう考えると眠っている脳も実際は仮死状態に近いんだろう。夢の世界、そここそが黄泉の国に一番近しい理想郷なのではないかと。夢は記憶の蓄積から作られた仮想空間のような場所であり、稀にその世界でも自由自在に自己を操れる人間もいる。実際は夢の方が現実で起きているときが夢なのかもしれない。

わたあめみたいに白く剥げたネコのキーホルダーと、今にも千切れそうなストラップチェーン。

蠢く錆びた空。常に自分を追い越していく散々な雲。枯れた向日葵の花弁の涙。

ん、と目を覚ませば隣にいた筈の君はもう存在していなかった。存在していないというよりは、自分以外の人間の記憶から君の記憶だけを上手く切り取られてしまったみたいな表現が近かった。自分だけがあの子を知っていて、君は自分以外のすべてを覚えていたのに皆は覚えていなかった。「また、失敗しちゃったね」とか自虐気味に言いながら自分の亡骸を第三者視点で眺めていた君。自分以外には見えていなくて、目の端っこに常にチラついている。自分が成功しない限り離れることはない。

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不可逆

不可逆(ふかぎゃく)と読みます。主に【黒昼ノ夢】という短編小説モドキを中心としてイラストを掲載しています。絵の方がメインな為、文章はやや稚拙気味。こちらを通して双方の強みを生かせるようになりたいです。

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