たんぽぽ畑に散歩した2人。
左の子「きれいだね」
右の子「…」
右の子はたんぽぽを、じーっと見ています。
周りの景色を見ていた左の子でしたが、つないでいた手が止まっていたので、右の子の方にチラッと顔を向けました。
左の子「?ああ、君たんぽぽ好きだもんね」
左の子は周りの景色を見るのをやめて、右の子の方にからだを向けて一緒にたんぽぽを眺めることにしました。
右の子(たんぽぽのわたげ好き。ふわふわで柔らかくて…持っていきたいなあ)
左の子「…わたげ気になるの?」
右の子はコクリとうなずきました。
この間見た。僕が声をかけたとき、この子はわたげを手に持っていた。その手をとっさに隠して、わたげをぐしゃぐしゃにして道に落とした。
そのときは、
(あれ?いらなかったのかなあ)って
気には止めなかった。
けれども帰り際、この子が手に何かを握り締めながら、ぐしゃぐしゃになったわたげの前で
立ちすくんでいた。
左の子(…ん?この子の手から何か出ている?
あれ、この子の周りのたんぽぽ、わたげだけない?)
左の子「ねえ」
右の子は驚いて、手に持っていたものを放してしまいました。
その瞬間、わたげが空に飛んでいきました。
左の子「とってもきれいだね。これだけしっかり見たのは初めてだよ」
左の子「君が持っていたから、僕は素敵なものを見ることができたよ。
ありがとう。」
右の子は、自分の気持ちを表す機会を失ってから、
自分は何の意思もない子をふるまっていたため、
自分のしたいことや欲しいことを外に出せなくなっていました。
だから、自然に受け止めてくれたことが嬉しかったのです。
そんなことがあったので、自分から手に取ることが難しい右の子のために、
左の子はたんぽぽを茎ごとプチンと取って、渡しました。
左の子「はい、どうぞ」
右の子(わあ…たんぽぽ、私の好きなたんぽぽだ…嬉しい
私、この大好きなたんぽぽを、もう後ろめたさなく堂々と持ち歩けるんだ)
右の子は、いつか左の子が言ってくれた言葉を思い出しました。
左の子「君が意思のない子なんて思ったことないよ。」
その言葉が本当だということが分かりました。
右の子は嬉しくて、ニッコリ。
左の子は右の子の嬉しそうな姿を見て、ニッコリ。
左の子「明日は、僕にたんぽぽの場所教えてくれないかな?」
右の子「…」
右の子はコクリと嬉しそうにうなずきました。