みなさまこんにちは。声に恋する。です。
今回は、私の好きな「歌」に関する短編小説を作成しました。
イラスト付きでご覧ください。

本編:
春。出会いと別れの季節。
そして新たな旅立ちの季節でもある。
この僕も、今、新しい挑戦へと歩みを始めた。
「うぅ~ん…今日のレッスンもキツかったー!!」
春の暖かさに包まれた夕方。
僕は歌のレッスンを終えて帰路についていた。
そう僕の挑戦とは。「歌手になること」。
僕は昔から歌が大好きだった。
そして大人になり社会人としてしばらく過ごしていたのだが。
やはり「歌手になりたい」という夢を諦めきれず。
この春から歌の養成所に通っていたのだ。
「基礎的向上はしているはず…なんだけど、やっぱりその先の歌唱力…だよなぁ。
自分だけの歌を…まだ持ててないというか…」
僕はぶつぶつと喋りながら歩いていた。
ふと、どこからか歌が聞こえてきた。
「…ん?」
目を向けると、そこには「町内カラオケ大会 開催中!」というのぼりがあった。
「カラオケ大会?そんなのやってたのか…最近レッスンで忙しかったから気付かなかった」
ステージを眺めてみると、子供から大人、おじいちゃんやおばあちゃんまで幅広い世代の人たちが思い思いに歌っていた。
「…楽しそうだな…」
僕は、思わずそう呟いていた。
「お!そこのお兄ちゃん!!君も歌っていくかい?」
その時、ステージの進行をしていたのであろう司会の男性が、僕の方を向いて声をかけてきた。
「…え?僕??」
「そうそう!飛び入りも大歓迎だよ!!」
僕は、少し戸惑った。
まだ自分の歌を持てていない僕が、人前で歌っていいのかと。
…でも。
「う、歌います!!」
僕は考えるより先に声を出していた。
「…とは言ったものの…何を歌えば…十八番?いや…」
僕はステージ袖で選曲に悩んでいた。
「お兄ちゃん、歌は好きかい?」
「…え?」
そんな時、また司会の男性が声をかけてくれた。
「す、好きです。大好きです!!」
「ハッハッハッ!!なら良かった!!なんとなく、そんな気がしたんだよね!」
司会の男性は豪快に笑った。
「お兄ちゃん、もし、歌う曲に迷っていたんなら、今、みんなに一番聞いてほしい曲を選びなよ!」
「聞いて…ほしい曲…」
「おう!なんせ、みんなお兄ちゃんの歌を聞きたがっている!!なら、自分の思いをぶつけられるものを選ぶのが一番いい!」
「…!」
みんなが、聞いてくれようとしている。
その言葉に、僕は迷いが吹っ切れた。
「それじゃ、これでお願いします!!」
僕が選んだ曲。
それは、僕が歌を好きになったきっかけの曲だった。
「…ふぅ」
ステージ上で歌を歌い終えた。
すると、たくさんの歓声と拍手が僕を包んでくれていた。
「兄ちゃんかっこよかったぞ!」「素敵!プロの方?綺麗だったわ!!」
「お兄ちゃんの歌ボクも歌いたーい!!」
沢山の声に、僕は思わず目頭が熱くなるのを感じた。
あぁ、そうだ。歌って…。
「…歌って、楽しいんだ‥!!」
カラオケ大会が終わり、僕は声をかけてくれた司会の男性にお礼を述べると
改めて帰路についた。
その足取りは、さっきよりもずいぶん軽く。
「よしっ!明日からのレッスンも頑張るぞ!!」
僕は、夢に向かって頑張るためのエネルギーに満ちていた。
春の暖かさが、そっと僕の背中を押してくれているような気がした。
終。