どこか嘘っぽい空だ。
見上げて初めにそう思った。
子どもが絵の具の入ったバケツを大きくひっくり返したかのような原色の青。そこに透明感はなく、浮かぶ雲もこれでもかというほど模範的な白さだ。
そんな雲の切れ間から見える太陽にはなんと顔がある。くっきりとした眉毛に大きな口が特徴的だ。
目が合ったらにっこりと微笑まれて、なんとも複雑な心境になった。
「こんなところにいたらどうしよう」
できればいて欲しくない。けれど一刻も早く見つけたいからいて欲しい。
そんな身勝手な思いを抱きながら樹のてっぺんから辺り一面を見渡す。
「うーん・・・ん?」
自分の今立っている樹がある森の中から悲鳴が聞こえた気がして視線を下げれば、見えたものは。
「・・・・ふーん」
”それ”をじっと見つめたまま、奈倉葉月はニヤリと笑った。
つづく