怪物の友達と休日

 ある日曜日、僕は友達と二人でゲームセンターに遊びに来ていた。彼女は
「私、これやりたい。」と言いながらクレーンゲームの方に指を指した。
「君がクレーンゲームとは意外だね。」僕は少し驚いた。友達とはそれなりの
付き合いだが彼女が自分の好きなデータカードダスではなく、クレーンゲームをやる様なタイプにはとてもじゃないが思えなかった。「今回はあのマスク
ドライバーのフィギアが欲しいからねぇ。」友達は目を輝かせながら言った。
 マスクドライバーは長年に渡り、テレビで放送されている特撮番組のマスク
ドライバーシリーズのヒーローだ。長い年月を続いているだけあってマスク
ドライバーの数は多い。

 「しかも、このマスクドライバーはカズトだからな。初めて見た時からDVDや
変身ベルトにアイテムをコンプリートするくらいには好き。それで主人公が
かなり現実的な性格で、それが大人の風格を出していて好きだったな。」
 友達は懐かそうに語った。

 「あの極動シリーズって何?」僕はクレーンゲームの中にあるカズトの
フィギアを指した。「フィギアのブランド。動きの極みを届けるから極動っていう
名前なんだって。」彼女はどこかうれしそうに語った。友達は自身の肩に
さげているバックから財布を取り出し、その中から百円玉を取り出して
クレーンゲームに入れた後、彼女は自分の財布をパーカーのポケットにしまい、
自身のバックを僕の胸に押し付けた。「預かっておいて。」僕は彼女をバックを
抱えた。

 「どれくらいで取れると思う?」僕は友達の問う。「私が満足するか、
泣くまで!」彼女はいつもの口癖を言いながらスティックを操作してボタンを
押した。そうするとクレーンは右側の一番奥にあるフィギアの箱に目掛けて
降りて、クワガタのハサミの様なアームがフィギアが入っている箱を
挟むように取った。「よし!そのまま行って!」友達は少し興奮しながら言った。
 内心、見ている僕もドキドキしている。キャッチャーは右へ移動している途中で箱が落ちてしまった。「あぁ、惜しい!」僕は思わず言った。「イケたと思ったのになぁ。」友達は悔しそうに言いながらパーカーのポケットから財布を
取り出し、百円玉を再びクレーンゲームに入れた後、左手でスティックを掴み、
落ちた箱を目掛けてスティックを右斜め上の方に倒した。キャッチャーが丁度、
落ちたフィギアの箱の真下に来たこと確認し、友達はボタンを押した。
 キャッチャーは箱を目掛けて降りて行き、アームは箱を挟む様に
掴んだ。だが少し不安定の様で箱が前と後ろにぶらぶらしており、今にも落ちて
しまいそうだが、順調に投入口に進んでいった。だが投入口が目前という所で
落ちてしまい、投入口には入らなかった。
 「これは惜しい。」僕はもどかしく感じた。「よし、もう一回。」彼女はやる気の
炎を燃やし、パーカーのポケットから財布を取り出し、財布から百円玉を
取り出して、財布を再びパーカーのポケットにしまった後、百円玉を
クレーンゲームに入れた。スティックを左手で掴み、フィギアを目掛けて
スティックを右に倒してあえて少し右に少しずらした所でボタンを押して、
キャッチャーを降ろした。左側のキャッチャー部分がフィギアの箱に
引っかかってしまい、右側のキャッチャー部分は箱の真ん中の部分に
降りた。そのままキャッチャーが掴もうとした時、

 掴もうとした力で右側のアームが箱を左に落としたのだ。「よっしゃ!」友達は
ガッツポーズをしながら喜んだ。「取れてよかったね。」僕はニッコリと
微笑みながら言った。

 彼女は大事そうにフィギアの箱を抱えた。「(クレーンゲームが)長期戦になると思ったけど、次は何やる?。」僕は友達に言った。「私はもう幸せだけど、次に
やるゲームかぁ。」彼女は悩みながら言った。二人で悩みながら歩いていと友達は
何か思い出したかの様に走って行った。「待ってよ。」僕は彼女を追いかけた。

 「今度はアレだ。」友達が指した先はガンバスターというデータカードダスの
ゲームだった。「これはなんだ?」やったことないゲーム機を前に僕は首を
傾げた。「マスクドライバーのゲームでカードを使って遊ぶんだ。ちょうど二台
あるからお前と対戦したかったんだ。」彼女は嬉しそうに説明してくた「僕は
やったことが無いし、カードを持ってないよ。」僕は友達に伝えた。「大丈夫
だって、カードなら貸してやるから。」そう言って彼女は自身の肩にかけている
カバンから分厚い本の様なものを取り出した。「それはなんだ?」僕は友達に
問う。

 友達は本の様なものを開いて僕に見せた。「ジャジャーン。私のカードを貸して
やるよ。この中から好きなものを選びまな。」友達は自慢する様に言った。「僕は
カードの性能や効果などは知らないよ。」僕は彼女に訴える様に言った。
 「大丈夫。私が教えていくから。」彼女は僕の背中をポンポンと優しく叩いた。
 友達のその自信はどこから来るのだろうか。「使えるカードは3枚までね。
後はカードには役割があって赤が攻撃中心のアタッカー、青が守りに特化した
ディフェンス、緑が仲間を回復するヒーラーで下側の色でその役割が
確認できるからよーく考えてね。」僕は頭を抱えながらも、友達のカードを
品定めする様に選んだ。「じゃあ、これとこれとこれ。」僕が選んだカードは
アタッカーでオオクワガタのアゴの様な頭のマスクドライバーオクワ、
ディフェンスで亀の甲羅の様な鎧を身にまとうマスクドライバー玄武、
ヒーラーで白衣を纏うマスクドライバーエイドを選び、彼女に見せた。
「ふーん、普通の編成だな。」友達はそっけない反応をした。「堅実にいくのが
僕だから。」僕は彼女に言い返した。
「まぁいいや、それじゃ百円を入れて。」僕は言われた通りに、
百円玉をゲーム機に入れた。「まずは基本を知るために最初のステージを
やって感覚を覚えてた方がいいか。[ゲームであそぶ]を選んでくれ。
そしたら下からカードが出てくる。」彼女に言われた通りに目の前にある
画面のタッチパネルで[ゲームであそぶ]を選択した。その後、下の小さな
取り出し口から1枚のカードを取り出した。
そのカードはプラチナの様にに輝くマスクドライバーでカードの左端に
[マスクドライバーガンム フジミフォーム]と書かれており、下側は緑色の
カードだった。「あ、我らが全知全能じゃん。」後ろから覗いていた友達が
呟いた。「全知全能?何それ?」僕は友達に問う。「こいつはいつも『我こそが
全知全能だ!』って顔芸を披露しながら言ってるからファンから全知全能って
呼ばれてんの。」そんなクセの強いキャラもいるのかと僕は首を傾げた。
 「さ、次はステージを選んで。」彼女が指示を出す。僕はタッチパネルで
[はじめての人はここのステージで!]と書かれてあるステージを選択した。
 「それじゃあ、カードをここにセットして。」ゲーム第に丁度カードが
はまる程の横幅があり、下から順に赤、オレンジ、黄色の色の細長いくぼみが
三つあり、友達はそこに指を指した。僕はその三つのくぼみにそれぞれ自分が
選んだカードを表向きに置いた。画面のタッチパネルはカードに描かれている
マスクドライバーがオクワ、玄武、エイドと召喚されいき、[チームがきまったら
ボタンをおしてくれ!]と表示されている。僕はゲーム台の右側にある赤い
ボタンを押した。「じゃあここからはゲームの指示に従ってくれ。」友達は腕を
組みながら言った。画面が切り替わり、[てきがあらわれたぞ!]と表示された。
敵の数は三人で次に名前が表示されてそれぞれ[スロウミュート・ココロ]、
[マスクドライバートゥルヌス]、[グレイド マガ]とある。画面が切り替わり、
右上に黄緑色の30cm定規を横向きにした様な自分のチームのHPバーと
その下に10650とHPの合計値を表す数字が、左上には同じく紫色の30cm
定規を横向きにした様な敵のHPバーとその下に10000とHPの合計値を表す数字が
表示された。次に[きみのターンだ!]と表示され、どうやら攻撃に入る様子で
あった。[タイミングよくボタンをおせ!]と右側に青い縦線が入っている
横向きの少し濃い灰色で細長い長方形バーが表示された。その灰色のバーの中に
オレンジ色のゲージが青い縦線を超えたり下回ったりと動いており、どうやら
タイミング良く押すタイミングバーの様なので僕はボタンを押した。僕は運良く
青い縦線をギリギリの所で超えたタイミングでゲーム台の右側にある赤い
ボタンを押した。正直、僕はタイミングを合わせるゲームは苦手だ。
 オクワがトゥルヌスに右ストレートで攻撃して[あいてのチームに2300
ダメージ!]と表示され、紫色のゲージは少し縮んだ。どうやら敵チームのHPは
左側にある紫色のバーの様だ。次に[てきチームのこうげきだ!]と表示され、
トゥルヌスが玄武に右ストレートをくらわせた。[自分のチームにダメージ1500
ダメージ!]表示され、左上にあるHPバーが少し縮んだ。「悪くないな。」友達は
少し上から目線に言った。[だい2ラウンド]と表示され、エイドが玄武を
回復させ、HPバーが少し伸びた。
そのあと、[きみのチームのこうげきだ!]表示され、またあの灰色のバーが
表示され、青い線を越えたタイミングで台の右側にある赤いボタンを押したが、
どうやらタイミングが少し遅かった様で青い線を下回っていた。[あいての
チームに1200ダメージ!]と表示され、相手のHPバーが少し縮んだ。そんな
こんなで5分後、なんとかこのゲームをクリアしたが、タイミング良くボタンを
押すのはやっぱり苦手だ。「やっと終わったな・・・」友達は痺れを切らした様に
言った。「待たせてごめんね。」僕は彼女に謝った。「これで対戦が出来るぜ。
手加減はしないよ。」 友達は嬉しそうに言った。僕と友達はそれぞれゲーム台に
百円玉を入れて[たいせん]を選択して、取り出し口から落ちてきたカードを
回収した後に友達とマッチングし、彼女と対戦する。僕のチームは変わらずに
オクワ、エイド、玄武であるのに対し、友達のチームはヒーラーのマスク
ドライバーライフト、アタッカーのマスクドライバーエンド、ディフェンスの
マスクドライバー拳陽(けんよう)という感じであった。
 僕は友達を侮っていた。最初こそ手加減はしないと言っていたがなんだ
かんだ手加減をしてくれるだろうと考えていたからだ。
 そんな甘い考えは10分後には絶望に変わっていた。

 「まさかここまで弱いとは・・・」友達は頭を抱えて言った。「タイミング
ゲーが苦手な僕が強い訳ないでしょ。」僕は諦めた様に言った。「対戦できる奴は
少ないのに・・・」友達はガッカリした様に言った。「もしかしてこの前のゲーム
の当てつけ?」僕は思い出した。あの時に僕がやりこんだゲームを初心者である
友達に対して大人げない対応をしていたので、多分その当てつけだろう。「あ、
バレた?」彼女は顔をきゃとんとさせた。僕はため息をついた。「でもでも対戦
相手が欲しいのはマジだから!」友達は慌てながら付け加えた。「分かったよ。
だけど今度は僕を指導してほしい。」僕は呆れながらも言った。「マジ感謝。」
 友達は手を合わせながら言った。対戦が終わった後、僕はゲーム台に百円玉を
入れて再び[ゲームであそぶ]を選択し、取り出し口から落ちてきたカードを
回収した後に[はじめての人はここのステージで!]と書かれてあるステージの
右隣にある次のステージを選択し、オクワ、エイド、玄武とカードをセットして
自分のターンが来た時に友達の指導を受けた。

 「お前はボタンを押すのが早過ぎるから気持ち遅めに押した方がいい。」友達は
タイミングバーを指しながらアドバイスをした。「分かった。」僕は返事をして、
少し遅いタイミングでボタンを押した。オレンジ色のゲージが灰色のバーの
端まで届いた様で[パーフェクト!!]と表示された。「なんか、いける気が
する・・・」自分の中でゲームが上手くなっていると確信した。
 [ひっさつわざのはつどうチャンスだ!]と表示され、必殺技を使うマスク
ドライバーを選ぶ様だったのでオクワを選択した。「オクワの必殺技はカッコいい
から必見だぞ。」友達は少し興奮した様に言った。オクワのベルトから電流の様な
エネルギー全身に巡り、オクワが「ドライバーパンチ・・・」と呟くと電流の
様なエネルギーが左腕に集中し、敵に対して左ストレートを当てると、敵が
特撮のお約束である爆発の中で倒された。[あいてのチームに6000ダメージ!]
と表示され、相手のHPが6割ほど縮んだ。「これは爽快だ。」僕は思わず口に
した。その後、友達のアドバイス通り進めてゲームをクリアした時にはもう
17時だった。「そろそろ帰らない?」僕は彼女に提案をした。「確かに。もう
帰るか。」僕と友達は自分達の荷物を纏め、外へ出た。

 「今日は楽しかったなぁ。」帰る途中、友達はあくびをしたがら言った。
 「僕も楽しかったよ。ありがとう。」僕は彼女にお礼を言った。

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志乃村 兄主

ゴジラ怪獣やゲーム、デュエマと人外に 絵を描くのが好きな寒がりでございます。 人外っていいよね。

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