「帽子屋!!」
自分たちを串刺しにしようとした男の名をシロウサギは叫ぶ。
しかし男────帽子屋は彼の呼びかけなど聞こえなかったかのように素早く巨大なフォークを構え直し、そのまま少女へ向かって行った。
「!」
それを見た少女は反射的に己が武器を頭上へかかげる。
次の瞬間、そこへ向かって容赦なく巨大なフォークが振り下ろされた。
その場一帯にかん高い金属音が響き渡る。
「・・・ッ、」
少女の顔色が変わった。
漆黒の棒は何とか巨大なフォークを受け止めているが、持つ両手がかたかたと震えている。
それを大きなシルクハットのつばの影からのぞく双眸がじっと見ている。
帽子屋は言った。
「貴様は邪魔だ。消えてもらう」
「・・・!!」
その言葉に少女が目つきを変えた────その時。
二人の真横に向かってすさまじい圧の突風が”ごう”と吹いた。
突然の事に帽子屋はとっさに目をつむる、その一瞬の隙を突いてシロウサギは少女のもとへ素早く駆け寄り、そのまま彼女を抱き上げて思いきり地を蹴る。
ダアンッ!!
力強い音が響いた。
直後に帽子屋が見たものは青空の中、遥か彼方へ宙を突っ切って遠ざかっていくシロウサギの小さな後ろ姿だった。
トゥイードルダムとトゥイードルディーの襲撃を受けて消耗しているはずだが、どうやら少女を助けるために力を振り絞ったらしい。
帽子屋はもう追いつけない所まで行ってしまっているシロウサギの小さな後ろ姿を鋭くにらみつけた。
「・・・逃がさんぞ、シロウサギ・・・!!」
つづく