THRILL SHOCK SUSPENSE #21
2025年6月 変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介 愛及屋烏
本陣殺人事件 (1946)
金田一耕助シリーズ 本陣殺人事件 Switch (2025)
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金田一耕助
『金田一耕助』は、横溝正史の推理小説に登場する架空の私立探偵。
江戸川乱歩の『明智小五郎』、高木彬光の『神津恭介』と並んで、日本三大名探偵と称される。
容姿
スズメの巣のようなボサボサの蓬髪をしており、人懐っこい笑顔が特徴。 顔立ちは至って平凡、体躯は貧相。 身長は5尺4寸(163.6cmくらい)、体重は14貫(52kgくらい)を割るだろうという。
自身の体格には劣等感を抱いており、それに関する記述は、『女王蜂』にて風呂場で筋骨隆々とした多門連太郎の裸体を見た時や『扉の影の女』で堂々たる風貌の金門剛に対面した時など、多々見受けられる。
なお、小男と書かれる事があるが、当時としては身長は平均並みであり、中背で痩せ型というのが正確な所であり、むしろ平凡さが強調されている。
ほとんどの事件において観た目は35、6歳と記述され、齢五十を超えている筈の『病院坂の首縊りの家』でも見かけはほとんど変わっていない。 『本陣殺人事件』など一、二の作を除いてはれっきとした中年男(当時としてはなおのこと)であるが、生活感が薄く書生気質を残している。
頭はフケ症で、服装は皺だらけの絣の単衣の着物と羽織によれよれの袴を合わせ形の崩れた帽子(お釜帽のイメージが強いが、パナマ帽、中折れ帽などの時もある)を被り、足元は爪が飛び出しかかっている汚れた白足袋に下駄履きが定番と非常に清潔感が無い服装が特徴。
また寒い時期には、羽織袴の上から上着(防寒着)に二重回し※を着こむ。
これらの姿から『蝙蝠と蛞蝓』では「雰囲気がコウモリに似ている」と言われ、『悪魔の寵児』では「壮士芝居の三枚目」と評された。
捜査の為、洋服で変装する事もあったが、「貧弱なサラリーマンにしか見えない」と等々力警部に笑われたり(『支那扇の女』)、「似合わない格好」だと揶揄されたりする事が多く「これでは、この男が洋服を忌避するのも無理はない」等とも描写されている。(『雌蛭』)
なお、『蜃気楼島の情熱』では金田一自身が日本での生活における洋服の不合理性を列挙して、和服主義の理由としている。
※とんび。袖なしのインバネスコートの事。
捜査スタイル
捜査の方法は、事件に絡む人脈・人間像の丹念な検証が主である。 アメリカから帰国して久保銀造の援助で探偵事務所を開設した後、某重大事件を解決した殊勲者として紹介された新聞記事には「足跡の捜索や、指紋の検出は、警察の方にやって貰います。自分はそれから得た結果を、論理的に分類総合していって、最後に推断を下すのです。これが私の探偵方法であります。」という発言が掲載されていた(『本陣殺人事件』)。
この様に最後の瞬間までは、捜査関係者にも手の内を明かさないスタンスである事から、更なる犠牲者を生む事も多い。 また敢えて犯人に自決を促したり、見逃したりするケースもあり、「事件は解決できるがホシは逃がしてしまう」という事も屡々ある。 等々力警部はこれを「金田一耕助流のヒューマニズム」と述べている。
また、金田一は警察には協力こそするが、情状によっては必ずしも真犯人を警察に引き渡す事を目的としていない。 これは、金田一にとってあくまでも事件の真相を知る事に最大の意味があるからである。
また世間的に真相が知られなくとも、真犯人が死ねば「報いは受けた」と考えている(『女王蜂』『首』など)。 その一方で、逆に自決を思いとどまらせる事もあった。 (『黒蘭姫』『迷路荘の惨劇』等)。
探偵活動の基礎技術をどこまで身につけているかについては不明確な部分もある。 例えば『三つ首塔』『病院坂の首縊りの家』等では自ら指紋照合を行っているが、『犬神家の一族』『不死蝶』等では指紋照合を専門家に委ねている。 途中で技能を習得した可能性も考えられるが、明確な描写は無い。
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