持ち前の大きな両足を遺憾なく使って大きく宙に跳び上がっては着地し、また助走をつけて地を蹴り、大きく跳び上がっては着地し、をひたすら繰り返す。
そうしてシロウサギは少女を小脇に抱えたまま元いた地点から必死で距離を取ろうとする。
「・・・・・!」
「・・・・」
「・・・さん!」
「・・・・」
「うさぎさん!!」
「!!」
呼ばれている事にようやく気が付いたシロウサギははっとして抱えている少女を見た。
彼女はこれ以上ないくらい真剣な表情で叫ぶ。
「血が出てる!!」
そう、双子に襲われた際に負った体中のあちこちの怪我から血があふれ出ていた。
「よく分からないけど、あなたが敵から逃げなきゃならないのは分かった。でももうあの・・・帽子屋?って奴は追って来れないと思う。いったんあなたは休むべきだ」
「・・・・」
休む?
思ってもみなかった事を言われて、シロウサギは困惑した。
(休む・・・休むなんて・・・・僕には、そんな時間は────)
少女はそんな、いっこうに返事をしない相手に向かって、
「あなたに目的があるのなら、今死ぬべきじゃない。今休まなければあなたは血を流し過ぎて死ぬ。どうしたい?」
と、ひたと目を合わせながら淡々と言った。
その声にはシロウサギへの同情心などかけらも感じられなかった。
わたしはどちらでも構わない。あなた次第だ。
そう言われているようで。
シロウサギの頭は一瞬で冷えた。
「・・・や」
「や?」
「休みます・・」
「よろしい」
渋い顔で何とか宣言したシロウサギに、少女はにこっと笑った。
本当に、彼女は何者なんだろう。
疑問は深まるばかりだったが────少なくとも、出会った時に感じた彼女への恐怖は薄まっていた。
つづく