第二話 「六丁の目少女監禁事件~前編~」
「はーっ・・・・。疲れたぜ・・・・。束縛とかめっちゃめんどくせー・・・・。なぁ、姉貴、冷蔵庫からプリンと炭酸ジュース持ってきて。」とソファでぐーたらと寝っ転がっている翔に姉の綾子は「はぁっ⁉」とキレながら翔に注意した。
「あんたねぇ・・・・、少しは自分でも動きなさいよ!高校生でしょ?アタシも書類の管理とかで忙しいの。彼氏との約束もあるし。」
「彼氏との約束は仕事の一部でもないだろ・・・・。書類はともかく・・・・。」と翔は姉である綾子にタメ口をたたく。
「アタシだってちゃんと仕事してるんだけど?でも、本当に書類の整理やまとめで忙しいんだから!ちょっとは手伝いなさい!!」
「本当かァ~⁉姉貴ぃwwwいつも厚化粧な癖にwwwwww」と翔がからかうと綾子はブチ切れした。
「翔~!!からかうのもいい加減にしろ!!弟でも容赦しねぇぞ!!」
「あぁ?やれるもんならやってみろよ!!」とお互い胸ぐらしてシャツを引っ張り、取っ組み合いの喧嘩になった。

「おい、お前ら・・・・。俺の仕事場で喧嘩すんじゃねぇ。綾子も大学生だし、翔も高校生だろ。少しは周りの空気も考えろ。」と翔と綾子の父であるこの探偵事務所の社長、奇薔薇浩一が喧嘩をする自分の娘と息子に説教した。
「す・・・、すいませんでした・・・・・。」とお互い強気な二人もシュンとなり謝った。
「それより、また仙台市内で事件が発生した。今ニュースで噂になっている事件だ。」と父の浩一は翔と綾子に今起きている事件の写真が載っている新聞を見せた。
「あ~あ、その事件、ネットニュースでも話題になっている事件だな。被害者は、通信制の宮城県グローバルドリーム学園に通う女子高生だよな。」
「確か、翔と同じ高校1年だったような気がする。グローバルドリーム学園は、校則が自由で色んな事が学べる凄い学校なのよね。この学校の理事長も結構有名なのよ。」と翔と綾子は話しながら、新聞を見た。
そして浩一はヤンキー姉弟の綾子と翔に被害者と加害者の写真を渡した。
「これが被害者の写真か・・・・。結構美人だな・・・・。」
「加害者の写真・・・・、どこかで見たことあるような・・・。」と二人は写真をじっと見る。

「被害者の女性は、グローバルドリーム学園の高校1年生だ。翔と同じ学年だが、とても明るいムードメーカーな性格をしている。だが、彼女は障害を持っているんだ。」と浩一が被害者について真剣な顔で語った。
「障害・・・・。」
「何の障害だ・・・・?」二人はゴクリと息を飲み込む。被害者の女子高校生の抱えている障害を調べるために浩一はパソコンを開いてサイトを開き、二人に見せた。
「自閉症・・・・と・・・・、ADHD・・・・。」
「いわゆる、発達障害ね・・・・・。」
「そうだ。彼女は自閉症やADHDなどといった発達障害を持っているが、ピアノが得意で賞をとっている有名な人だ。」と浩一は被害者のことについて話した。
「ニュースで聞いたことがある。彼女の両親が政治家で偉い人で裕福な家庭なのよ。」
「そうなのか・・・・。で、その被害者の女はどこにいるんだ?」と翔が被害者がいる場所を問いかけると浩一はこう返した。
「その被害者の女は誰かに監禁されてしまい、仙台市のどこかにいる。確か・・・・、仙台港の方へ犯人と向かっていったんではないか?」そう、被害者は六丁の目の物倉庫に閉じ込められたままだが、犯人らは仙台港へと逃亡していたのだ。
「仙台港・・・・・。」
「多賀城のあたりに行くと、工業地帯なところあるもんね・・・・。建物が・・・・。」とスマホの地図を見ながら犯人が逃げた場所を辿っていく。
そんなピアノを弾くことが得意な明るい性格の女子高生が何故誘拐、監禁されたのかを翔は腕を組みながら考えていた。
「確か、障害を持っている子は、精神障害などの二次障害などになってしまうこともあり得る・・・。できるだけ早く助けないと!」
「ああ、そうだな。とりあえず被害者の通っている学校や親などに女子高生のことを聞きに行こうぜ!」と言って、翔と綾子は交通網を使いながら被害者のこと聞きに学校や被害者の住んでいる家に向かった。

被害者が通っている学校の校長や先生、クラスメイトや友人、両親などに被害者が誘拐される前の当日、何をしていたかを事情聴取した。
事情聴取をすると学校の校長や先生、クラスメイト、友人が被害者が「誰かに後をつけられている」と相談していたことが分かった。両親に聞くと友人や先生に聞いた時と同じ答えが返ってきた。健気で明るい子だったそうだ。
「被害者の女、みんなから慕われているくらい性格が優しかったんだな。」
「何でそんなクラスでムードメーカーな子が狙われてしまうのか・・・・。、とりあえず、近所の人にも聞いてみましょ!」
「おう!」と二人はこの後も犯人の知り合いや学校、仕事先、被害者が住む家の近所の人などに聞いて回った。そして時間はあっという間に夜になったので、夕飯はファーストフード店で外食をして事務所に帰った。
「ただいま~・・・・・。沢山色んな人から事情を聴いて、今帰ってきたぞ。」
「ふぅ~っ・・・・。沢山聞いて回ったから、くたびれちまったよ・・・・。」と二人はくたびれ状態だった。
「姉弟揃ってお疲れさんだな。どうだった?犯人や被害者の情報は少しは掴めたか?」と父の浩一が二人に聞いた。
「どうやら被害者の女は、前から犯人の事について悩まされていたそうだ。犯人からストーカー被害にあっていて、よく両親やクラスメイト、学校に相談していたそうだ。」
「犯人の方は幼い頃から不幸体質で、何度も女性からフラれていたらしい。性格はおとなしい性格だが、色々あり
ぎて、凶暴な性格へと変わっていったようね。今は、裏社会の組織にいて活動しているとか・・・・。」
と犯人や被害者の具体的なことを浩一に知らせた。
「そうか・・・・。教えてくれてありがとな。犯人が裏社会の組織化・・・・。まぁ、とりあえずお前らは明日、事件があった現場に行ってくれ。」
「わかった。」
「了解。父さん。あとは、アタシらに任せて。」
と言って仕事を終え、学校の勉強を少しやり、就寝した。そして翌日、スマホの目覚ましの音で翔は起きた。
「ふわぁっ・・・・・。もう朝かよ・・・・・・。」と言って、翔は着替えや身支度をした。朝ご飯を姉の綾子とガッツリ食べて、ボサボサな髪をワックスなどで整えて姉弟揃って被害者が閉じ込められている六丁の目の事件現場へバイクで走らせて行った。
<まもなく、左方向です。(綾子のスマホのナビ)>
「翔、この先左に曲がれば、事件の現場に到着できるみたい。」
「ああ、分かった。姉ちゃんも気を付けて運転しろよ!」
「わかってるって!翔もね!」と二人は意気投合しながら青信号で左に曲がり、事件現場に到着した。
ー六丁の目ー
一方その頃、犯人から必死に逃げていた被害者は犯人に捕まり、六丁の目にある大きい倉庫の中に一人閉じ込められていた。
「んっー!ん-っ!(口も布で塞がれちゃったし、どうすれば助けを求められるのかな・・・・。手もロープで巻かれて自由に動かないし・・・・。お願い・・・・!誰か助けて・・・・!!!」と被害者の女子高生はロープに縛られながら、涙目で助けを求めていた。

すると物置の扉が大きく開き、光が暗い倉庫の中に差し込んだ。女子高生は犯人がまた自分に何かをしに来たかと思い、少し怖がっていた。
「ん・・・・・。んーっ!!(やめて・・・!これ以上私をどうする気なの・・・・⁉)」女子高生は震えていながら泣いている。よっぽど怖かったのであろう。
「大丈夫だ。君に危害を加えたりしない。俺らは探偵だ。今、ロープと布を解いてやるからな。」と翔と綾子は被害者の女子高生の精神を安心させながら巻きつかれたロープや布を解いた。
「可愛そうに・・・・・。長時間口も手も塞がれて大変だったろう。はい、これ。自販機でさっき買ったやつだけど飲みな。」綾子は、自動販売機で買ったドリンクを女子高生に渡した。
「ぷはぁっ・・・!助かりました・・・・!!ありがとうございます・・・・!!」とドリンクを飲んでロープから解放した女子高生は翔と綾子にお礼を言った。
「こんな所で監禁されて一体何があったんだ?あ、まず名前から教えてくれ。」
「私は、グローバルドリーム学園高等部1年の神山奈々です。」と翔が女子高生に訪ねると女子高生は自己紹介した。名前は神山奈々。グローバルドリーム学園の高校1年生。見た目は、ギャルっぽい格好だが、礼儀正しい性格の持ち主だ。綾子も同じ性別として、奈々に話しかけた。
「奈々、事件当日何があったか教えてくれる?無理のない範囲でいいから。」
「実は⋯。」と奈々は事件までの一部始終を翔と綾子に話した。話しながらも奈々はいつ犯人がここに戻ってくるか不安でキョロキョロしていた。それもそうだろう。一日もこの大きな物倉庫で、ロープや布で縛られながら助けを持っていたのだから。
「すべて話してくれてありがとうな。後はここから脱出するだけだな。」
「そうね。犯人が来ないうちに。」
「そうですね。」と三人は倉庫から脱出するため、出口へと向かった。しかし、犯人が倉庫に戻ってきてしまった。
ーガシャンー!
「え・・・・・・。」
「おいおい。何で布とロープを解いたのかなぁっ⁉・・・・って、お前ら誰だ!!勝手に解きやがって!」犯人は犬が威嚇するかのような顔つきで翔と綾子を睨んだ。手にはナイフを持っている。
「・・・・・っ!こいつ・・・・・!!」
「どうやらこいつが犯人のようね・・・・。やっつけないと・・・!!」

ー後編に続くー