「・・・おはようございます・・・・?」
意識が完全に覚醒しきっていないシロウサギは、はてこの少女は誰だっただろうかと記憶をたどって────
────彼女が自分の命の恩人である事をすぐに思い出した。
「・・・ッ、あっ、あのっ!!」
「はいはい。何でしょう」
泡を食って自分よりもずっと小さな少女の前に膝をついた。そんなシロウサギを彼女はにこにこしながら見ている。
「────改めて、貴女に感謝を。僕が眠っている間、誰かが来ないか見ていてくれたのですね」
おかげで傷の回復に専念でき、今では体に傷一つ残っていない。
「どういたしまして」
少女は笑う。人好きのする笑顔だ。
そんな相手を、シロウサギはじっと見つめる。
そうして、彼は注意深く言葉にした────その問いを。
「僕の命を狙わず、この国で最も力ある者が誰かを知らない。────貴女は一体、誰なんです?」
シロウサギの真紅の瞳が少女の琥珀の瞳を見つめる。
少女はぱちくりと瞬いた。
「・・・ああ、自己紹介がまだだったね」
そう言って彼女は立ち上がる。それでようやく膝をついたシロウサギと目線の高さが同じになった。
少女はうやうやしく胸に手を当ててお辞儀をする。
「初めましてうさぎさん。わたしは旅人」
顔を上げた彼女の瞳はどこまでも澄んでいた。
「奈倉葉月(なくらはづき)っていうの。弟を捜しているんだ」
つづく