シロウサギは葉月が強引に話題を変えようとしている事を察したが、彼女の言う事ももっともかと受け入れた。
(ウサギであろうと、なかろうと────彼女は僕の命を救ってくれた。その事実に変わりはない)
それなら、まあいいかと。
「・・・そうですね。お話ししましょう、この国の事を」
不思議の国で、今何が起きているのかを。
「この国は一人の女王が治めています。
彼女は膨大な魔法の力の持ち主で・・・その力を以てこの国の平和が保たれているんです。
彼女の力は”人の心を晴らす力”────それによってこの国の住人たちは心穏やかに毎日の生活を送れていました。
誰も悲しまない
誰も困らない
誰も苦しまない
誰も怖がらない
誰も不安にならない
誰も怒らない
誰も傷付かない
誰も寂しくない
だから誰も争わない。
誰もが言いました。
『この国は幸せな国だ』
って。
『女王のおかげで皆毎日笑っていられる』
って。
けれど・・・
僕は思ったんです。
『本当にこれでいいのか』って」
つづく