不思議の国の冒険 第十一話

「『自分の心の在り方をすべて彼女に任せっきりにしているこの国は、本当に正しいのだろうか』って・・・。

それに僕は不安だった。

たった一人で魔力を使い続けていたら彼女は、しまいにはすりきれて消えてしまうんじゃないかって・・・。

だからある日言ったんです。

『貴女は女王を辞めていい』と。

『この国は”女王”がいなくても皆で力を出し合って生きていけるから』と。

そうしたら────

・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・彼女は、その時とてもとても傷付いた顔をしていました。

────そうして彼女は暴走したんです。

感情の制御ができなくなった彼女の魔力は暴走し、城を薔薇の茨で閉ざしました。

暴走した魔力は国の住人たちの心にも影響を及ぼし────

正気を失った彼らは────

一斉に僕を追いかけ始めたのです。

彼らの目的はただ一つ、シロウサギ(ぼく)をこの国から排除する事。

きっと・・・彼女を傷付けた僕を、彼女は『この国に不要(いらない)』と思ったのでしょう。

その思いが魔力となって住人たちを支配し、彼らは僕を追いかけるようになったのだと思います。

これが・・・この国に起きている事です」

シロウサギの話を黙って聞いていた葉月は、

「・・・そっか」

今の話を噛みしめるようにうつむいて、どこか寂しげな目をした。

「わたしたちと・・・同じだね」

その呟きは、シロウサギに届く事はなかった。

つづく

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晴之木豊

初めまして、晴之木豊(はれのきゆたか)と申します。 絵や小説を書くことが好きです。ここでは主に小説を書いていけたらいいなと思います。 よろしくお願いします。

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