「『自分の心の在り方をすべて彼女に任せっきりにしているこの国は、本当に正しいのだろうか』って・・・。
それに僕は不安だった。
たった一人で魔力を使い続けていたら彼女は、しまいにはすりきれて消えてしまうんじゃないかって・・・。
だからある日言ったんです。
『貴女は女王を辞めていい』と。
『この国は”女王”がいなくても皆で力を出し合って生きていけるから』と。
そうしたら────
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・彼女は、その時とてもとても傷付いた顔をしていました。
────そうして彼女は暴走したんです。
感情の制御ができなくなった彼女の魔力は暴走し、城を薔薇の茨で閉ざしました。
暴走した魔力は国の住人たちの心にも影響を及ぼし────
正気を失った彼らは────
一斉に僕を追いかけ始めたのです。
彼らの目的はただ一つ、シロウサギ(ぼく)をこの国から排除する事。
きっと・・・彼女を傷付けた僕を、彼女は『この国に不要(いらない)』と思ったのでしょう。
その思いが魔力となって住人たちを支配し、彼らは僕を追いかけるようになったのだと思います。
これが・・・この国に起きている事です」
シロウサギの話を黙って聞いていた葉月は、
「・・・そっか」
今の話を噛みしめるようにうつむいて、どこか寂しげな目をした。
「わたしたちと・・・同じだね」
その呟きは、シロウサギに届く事はなかった。
つづく