「ねえ、一つ疑問なんだけど」
「はい」
「どうしてうさぎさんには女王の魔力が及ばないの?」
葉月は首を傾げてみせた。
「君だけ正気を保ってるし、そもそも心が晴れているなら女王を案じて不安になる事もないよね?」
「ああ・・・」
シロウサギは一つ頷いて、答えた。
「さっきウサギだけがこの国と”外”とを行き来できるって言いましたよね?そういった特殊な種族なので、ウサギは女王の力の影響を受けないんです」
「ふうん・・・」
それを聞いた葉月は何事か思案するように目を細める。
そうして顔を上げた彼女はひたとシロウサギの目を見すえた。
「ねえ、君はこれからどうするつもりなの?逃げるの?」
この国から。
それを聞いたシロウサギは彼女から視線をそらさず、
「いいえ!」
と言った。
「女王に会いに行きます。会って────傷付けた事を謝ります!」
許してもらえなかったとしても。
殺される事になったとしても。
伝えなきゃならない。
国の皆をこんな風にしてしまったのは僕だから。
国をこんな風にしてしまうほど、彼女を傷付けたのは、僕だから────
そう血を吐くような思いで言葉を口にしたシロウサギは、痛みに耐えるように目をぎゅっと閉じた。
そんな彼に葉月はあっけらかんと言う。
「じゃあ、わたしも行くよ!」
「は・・・!?」
ぎょっとして目を開いたシロウサギが見たものは、満面の笑みを浮かべている葉月だった。
つづく