「な・・・っ、何言ってるんですか!?貴女には関係ない事でしょう!?」
シロウサギは動揺のあまり叫んでしまった。
彼女は自分を助けてくれた。なるほど彼女は心優しい勇敢な人間なのだろう。
けれどここから先も自分に同行するというのは訳が分からない。
(だって僕と一緒にいたら────)
『貴様は邪魔だ。消えてもらう』
帽子屋が彼女に告げた言葉を思い出す。
(ハヅキも、命を狙われる事になる)
それは────ダメだ。絶対に!
シロウサギが意を決して口を開こうとしたが、それより先に葉月が語り始めた。
「・・・言ったでしょ、弟を捜してるって」
静かな声だった。けれど有無を言わせぬ声だった。
シロウサギは息を呑み、二の句を告げなくなる。
既に太陽は中天に昇っている。それでもなお陽射しをさえぎる木々の葉の下で、薄暗い空間の中にあって葉月の双眸は煌々と光を放っているかのように明瞭だった。
────それはまるで、猫の目のように。
「弟を捜すための手がかりは”強い力を持った誰か”なんだ」
「強い力を・・・」
そこでシロウサギははっとした。
『この世界でいちばん強い力を持った人って誰?』
そうだ。確かに彼女は自分にそう聞いていた。
その時の事を思い出していたシロウサギに向かって、葉月は言った。
「だから行かせて。わたしも女王に会いたいんだ!」
つづく