「・・・危険ですよ?」
シロウサギは言った。相手がそんな事など十分理解しているだろう事を承知の上で。
「大丈夫。危険には慣れてるから」
葉月は言った。相手が自分がこう返すであろう事をもう察しているだろうと思いながら。
「何かあっても自己責任で対処するよ」
「・・・・」
シロウサギは少し迷って────そうして頷いた。
「・・・分かりまし」
「エクセレーーーーーーーーーーーーントッッ!!!!」
突如その場一帯に響き渡るしゃがれ声が二人の耳をつんざいた。
「この声は──」
「上だ!!」
葉月の叫びにシロウサギはとっさに地を蹴って横へ跳んだ。葉月も彼とは逆方向へ跳ぶ。
直後、二人が直前までいた地点目掛けて全長2mもあろうかという程の巨大な何かが高速回転で木々の枝を次々へし折りながら落ちてきた。
それが大地と衝突し、激しい地響きの音が二人の体を震わせる。
葉月は叫んだ。
「うさぎさん!!ここは視界が悪い、走っ」
「させると思うかね?」
低いしゃがれ声が、すぐそばで聞こえた。
(しまっ──)
次の瞬間、葉月の体は打撃によって勢いよく吹き飛ばされる。
深い森の中を真っ直ぐすっ飛んでいき、樹の幹にぶち当たってようやく止まった。
「かは・・・ッ、」
ずるりと少女の体が力なく倒れる。
「ハヅキ!!」
シロウサギが彼女のもとへ駆け付けようとするが、目の前に巨大な影が立ちふさがった。
「さて────たった一人の味方を失った気持ちはいかがかね?シロウサギよ」
「おまえ・・・!!」
シロウサギは怒気を露わにした。それは彼にとってはめったにない事だった。
しかし相手にとってはどうでもいい事のようで。
「素晴らしい・・・実に素晴らしい!!我輩以外の誰も見つけられなかった!!我輩が見つけたのだ────この我輩が!!」
薄暗い空間の中、その時一筋の風が吹き、木々の葉がゆれて木漏れ日がその巨大な影を一瞬、照らした。
白い。
そして楕円形の体から手足が生えている。
────それは卵だった。
「女王陛下はお褒めくださるに違いない!!この我輩────ハンプティ・ダンプティを!!」
つづく