不思議の国の冒険 第十七話

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
心の中でずっと謝っている。
それでも時間は巻き戻ったりしない。
やり直す事なんて、できない。
だからわたしは進むのだ。
あなたを見つけ出して、傷付けた事を謝るために。
許してもらえないかもしれない。
それでもいい。わたしはそれだけの事を言ったのだから。
だから、これはわたしの自己満足に過ぎない。
あなたに直接会って謝りたいというわたし自身のエゴのために、わたしは進むのだ────

葉月は目を覚ました。

「・・・・」

体に痛みはない。お守りのおかげで受けたダメージはあらかた回復している。
葉月は樹に背を預けた状態のまま、大きくため息を吐いた。

(やってくれたな、あの卵・・・)

見れば葉月がいる地点から数十メートル先がなぜか明るい。

(周辺の樹々が倒れて・・・日差しが届いている・・・?)

だんだん意識がはっきりしてきた。すると聞こえてくる音がある。
何か固いものが猛スピードで樹に激突し、その樹が折れて倒れていく音。それが間隔を置いて断続的に続いている。

「あははははははほらほらほらほら!!避けないと全身の骨がへし折れるぞ!!」

「くっ・・・!」

ハンプティ・ダンプティが自ら高速回転しながらピンボールのように周辺のあちらこちらへ突撃していっているのを、シロウサギが巻き込まれないように逃げ回っていた。

「・・・あー」

確かにアレは一撃まともに受けたら致命傷になるやつだろう。
シロウサギはよく避けているが、彼の体力は無尽蔵ではない。それ故に彼と初めて会った時、彼は弱りきって傷だらけだったのだ。

「はー、よっこいしょっと」

葉月はゆっくりと立ち上がり、肩をぐるぐると回した。────よし、異常なし。
そうして予備動作なしで地を蹴り、その場から弾丸のように跳び出した。

つづく

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晴之木豊

初めまして、晴之木豊(はれのきゆたか)と申します。 絵や小説を書くことが好きです。ここでは主に小説を書いていけたらいいなと思います。 よろしくお願いします。

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