Miaou Café ミャウカフェ~不思議な喫茶店~③「とら」の場合(1)

「……やっちまった」

──彼は、がっくりと肩を落とし落ち込んでいた。
歩く足取りはずっしりと重く、失敗の重さを物語っているようだ。

──用意していた筈の資料は見つからず、そこからドミノ倒しのように不運の連鎖は続いたからである。

「今日のプレゼン失敗だったな……」

死んだ魚のような目でトボトボと帰路に着く途中だった。

「ニャっ」

目線を上に向けると、ブロック塀に猫が座っていた。茶虎の少しぽっちゃりとした猫だ。

自分に声をかけているように一鳴きする。

『──元気ないからモフらせてやるよ』

「そういや実家の猫もこんな感じだったな……。お前にちょっと似てるかも……」

悩んでいる時、どこからともなくやってきて、お構いなしに胡坐の上へどっすりと据わり丸くなる。

──そんな奴だった。

彼は、そっと猫の頭をなでる。猫特有の触感が手のひらに伝わる。
しばらくすると、猫は満足したのか、すっと身体を起こすと歩きはじめる。

……家に帰るんじゃないのか?

猫は一定の距離を歩いた後、彼を見る。ついてこいと言うように。

「……そんなところも似てるのかよ」

──彼は、導かれるように猫の後を追いかけていった。

♦♦♦

猫は建物の中に入り込んだ。蔦が壁に覆われている。

「……カフェ?」

──ドアを開けて店の中に入る。

「お邪魔します……?」

「──いらっしゃいませ。空いている席へどうぞ」

店内では、猫が二足歩行をして話していた。──どうやら、茶虎の猫の店員さんが案内をしてくれるようだ。

彼は現実逃避をしながら空いている席に着く。

『──ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください』

茶虎の猫は一礼をして、席を離れたのだった。


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コロレ

初めまして。コロレと申します。動物と小説や漫画、アニメが大好きです。 アイビスペイントや画像生成AIを使ってイラストを作っています。 よろしくお願いします。

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