黄色の毛皮に狐の様な耳の友達と公園の屋根がないベンチでゲームで
遊んでいると空が雲一つない晴天が急に曇り、ポツポツと雨が降り始めた。
僕は肩にかけているカバンから折りたたみ傘を取り出し、傘をさした。
「これくらいの雨なら大丈夫だって。」そんな友達の意見とは逆に雨は
次第に強くなっていき、ザーザーと強く降ってきた。「ウソだろ?!」友達は
驚いて言った。彼女は全身が雨でびしょ濡れになっていき、慌てて自身の左肩に
かけているカバンから白い折りたたみ傘を取り出し、その折りたたみ傘をさす。
「ウチに来い!」確かにこの公園から近くて雨宿りが出来る所で言えば友達の
家しかなかった。「分かった。」そう言うと慌てている友達がそう言うと僕の腕を
掴んで強引に友達は自身の家まで走って行った。
「今日の天気予報は晴れだったのに!」友達は嘆きながら走った。走っていると
友達の家のドアまで着いて、僕と友達は玄関に入った。

「雨は好きだが雨で濡れるのはキライだ・・・。」彼女は少しドスが効いた声で
呟いた。「それじゃあ私はシャワー浴びてくる。」友達は家に上がりながら
言った。「待って。」僕は友達に声をかけた。「どうした?」友達が僕の方へ
振り返った。「君の家にある紐とティッシュと黒ペンを借りたいんだけど、
いいかな?」僕は友達に尋ねる。「いいけど何に使うんだ?」友達が僕に尋ねる。
「雨から晴天に変えてくれるアイテムを作りたいから。」僕は答えた。
「分かった。あまり使いすぎない様にな。」友達は快く答えてくれた。彼女は
しばらく家の中を駆け回り黒い紐と未使用のティッシュ箱、黒ペンを見つけて
貸してくれた。「それじゃあ私はシャワー浴びてくる。」そう言って友達は自身の
着替えとタオルを持って浴槽へ向かった。僕はリビングのソファーに腰を
掛けながら黒い紐と未使用のティッシュ箱、黒ペンでてるてる坊主を作り
始めた。
10分後、ちょうど完成した頃に友達がリビングに戻ってソファーに腰を
掛けた。僕は彼女のフワフワの毛皮に少し興味を持った。「少し触っても
いいかな?」僕は友達に尋ねた。「いいぞ。お前も物好きだなぁ。」そう言って
彼女は左腕を僕の方へ差し出した。

僕は友達の左手の手のひらを両手で触った。その感触はまるで布団乾燥機を
使った直後の布団の様にふわふわで温かい感触だ。「結構ふわふわしいるね。」
僕は思わず口にした。「まぁな。全身ドライヤーで乾かしているからな。」
彼女は少し誇らしげに言った。「そういえば雨から晴天に変えてくれる
アイテムとやらは?」友達は僕に尋ねた。僕は完成したてるてる坊主を
彼女に渡し、彼女は優しく受け取った。「なんだこれ?」友達は首を傾げた。

「てるてる坊主だよ。これを窓際につけると雨が止むんだよ。」僕は友達に
説明した。「思い出した。これこの前にテレビでやってヤツだ。」友達はふと
思い出した様だ。「私達にも似た様な物がある。取ってくるから少し待ってくれ。」
そう言って彼女はリビングから出て行った。5分後、友達がリビングから
なにやらかかしの様な形をした人形らしき物でを抱えて戻ってきた。
その人形らしき物は両手にはうちわがついている。

「何ソレ?」僕は友達に問う。「これは私達ナナシ族がずいぶん昔に作った
アマユウドウって人形でさ。農家達の畑に雨雲を飛ばしてくれるありがたい
人形さ。」彼女は説明をする。どうやら雨に対する認識が我々人間と少し
違う様だ。「自分の名前は教えないのに道具の名前は教えてくれるなんて
ナナシ族は不思議だなぁ。」僕は思わず口にした。彼女達ナナシ族は自分の
家族以外には絶対に本名を教えない、伝えないという少し変わった種族だ。
家族前以外では本名で呼ぶことはない。だが友達曰く「本名でなければなんで
もいい。」らしく意外にも困っていない。余談だがナナシ族の本名を知るには
養子になるか結婚するしかない。また、ナナシ族と離婚または家族と絶縁する
といった「家族ではない」状態になると、そのナナシ族の本名を記憶から
消す・・・らしい。「前にも言っただろ?家族以外に本名は教えることは
出来ないって。それよりそのてるてる坊主をどこにつければいいんだ?」友達は
てるてる坊主を右手に持ちながら僕に尋ねた。「あぁ、カーテンのレールに
つければいいよ。」僕は友達に指示した。友達は指示通りにカーテンのレールに
てるてる坊主についている紐をカーテンのレールに結んだ。「ついでにこいつも
つけておこう。」友達はアマユウドウについている紐をカーテンのレール結んだ。
