「ハンプティ・ダンプティが?」
「はい。湖の底にぶくぶく沈んでおりました」
「まあ大変。────では兵隊と騎馬隊を向かわせなさい。助けてあげなくちゃ」
そういう約束ですからね、と女王は言った。
「かしこまりました」
「もう、シオンったら乱暴ね。わたしは穏便にこの国から出て行って欲しいだけなのに」
「・・・・・」
「あなただけが頼りだわ。頼みましたよ、帽子屋(マッド・ハッター)」
「御意。我らが女王陛下」
「やあ帽子屋。お疲れ様」
「三月ウサギ・・・」
「陛下は相変わらず?」
「ああ」
「そっかー、そりゃシオンも大変だ」
「シロウサギは自業自得だ。同情する余地など無い」
「あはは!それもそうだね」
「それよりも・・・あの異邦人の存在を陛下に知られる前に、早々に処理しなければ」
「え?陛下、気付いてないの?」
「そのようだ。────行くぞ、三月ウサギ。これ以上陛下の憂いを増やす前に、全て終わらせる」
「・・・うん」
迷いなく先を行く己の相棒の背中を見ながら、三月ウサギはひとり何事か考えるように目を細めた。
つづく