不思議の国の冒険 第十九話

「ハンプティ・ダンプティが?」

「はい。湖の底にぶくぶく沈んでおりました」

「まあ大変。────では兵隊と騎馬隊を向かわせなさい。助けてあげなくちゃ」

そういう約束ですからね、と女王は言った。

「かしこまりました」

「もう、シオンったら乱暴ね。わたしは穏便にこの国から出て行って欲しいだけなのに」

「・・・・・」

「あなただけが頼りだわ。頼みましたよ、帽子屋(マッド・ハッター)」

「御意。我らが女王陛下」

「やあ帽子屋。お疲れ様」

「三月ウサギ・・・」

「陛下は相変わらず?」

「ああ」

「そっかー、そりゃシオンも大変だ」

「シロウサギは自業自得だ。同情する余地など無い」

「あはは!それもそうだね」

「それよりも・・・あの異邦人の存在を陛下に知られる前に、早々に処理しなければ」

「え?陛下、気付いてないの?」

「そのようだ。────行くぞ、三月ウサギ。これ以上陛下の憂いを増やす前に、全て終わらせる」

「・・・うん」

迷いなく先を行く己の相棒の背中を見ながら、三月ウサギはひとり何事か考えるように目を細めた。

つづく

  • 0
  • 0
  • 0

晴之木豊

初めまして、晴之木豊(はれのきゆたか)と申します。 絵や小説を書くことが好きです。ここでは主に小説を書いていけたらいいなと思います。 よろしくお願いします。

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内